診断の手引き

  1. 骨系統疾患
  2. 大分類: 骨系統疾患
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進行性骨化性線維異形成症

しんこうせいこっかせいせんいいけいせいしょう

fibrodysplasia ossificans progressiva

告示

番号:5

疾病名:進行性骨化性線維異形成症

状態の程度

疾病名に該当する場合

診断基準

A 症状

1)進行性の異所性骨化
 乳児期から学童期に初回のフレアアップを生じることが多く、その後引き続いて筋肉、腱、筋膜、靱帯などの軟部組織が骨化する。フレアアップは外傷(手術などの医療行為を含む)に引き続いて生じることが多いが、先行する外傷がはっきりしないこともある。フレアアップは移動性のこともある。またフレアアップを経ずに異所性骨化を生じることもある。骨化を生じる順序は、背側から腹側、体幹から四肢、頭側から尾側が典型的で、多くは頭部か背部に初発する。異所性骨化により四肢では関節の拘縮、強直、体幹では可動性低下や変形、頭部では開口制限につながる。横隔膜、舌、外眼筋、心筋、平滑筋に骨化は生じない。

2)母趾の変形・短縮
 生下時から認め、変形は外反母趾が多い。

3)その他の身体的特徴
 生下時から頸部の可動域制限を認めることが多い。手の母指の短縮、小指の弯曲、下腿近位などの骨突出を認めることがある。開口制限を認めることがある。


B 検査所見

1)フレアアップと異所性骨化
 フレアアップの部位のMRI検査では、皮下軟部組織の炎症性変化を捉えることができる。異所性骨化は、単純X線やCTで確認することができる。

2)母趾の変形・短縮
 第一中足骨遠位関節面が傾いていることが多い。短縮は、基節骨、第一中手骨に認める。年齢とともに基節骨と末節骨が癒合することがある。

3)その他
 頚椎X線では棘突起の肥大、高い椎体高、椎間関節の癒合を認める。太い大腿骨頚部、脛骨近位内側の骨突出、母指の末節骨や第一中手骨の短縮、踵骨の二重骨化や骨棘を認めることがある。


C 遺伝学的検査等

ACVR1/ALK2遺伝子に変異を認める。最も多いのは 617G>A (R206H)変異であるが、その他の変異の報告もある。


D 鑑別診断

軟部組織の骨化や石灰化を生じる疾患を鑑別する。外傷性骨化性筋炎は外傷後に軟部組織の異所性骨化を生じる疾患であるが、単発性であり、母趾の変形・短縮を伴わない。進行性骨性異形成症(Progressive Osseous Heteroplasia)は小児期から高度な皮下組織石灰化を生じる遺伝性疾患で、石灰化のために活動性が妨げられる。Albright遺伝性骨異栄養症は、低身長、肥満、円形顔貌、思春期遅発、皮膚や皮下の石灰化、短指(趾)を示す疾患で、偽性副甲状腺機能低下症の部分症状の場合がある。


E-1 確実例

AおよびBの1)から3)のうち1項目以上を満たし、Dの鑑別疾患を除外し、Cの遺伝学的検査で ACVR1/ALK2遺伝子に変異を認めたもの。


E-2 疑い例

AおよびBの1)および2)の両者を満たし、Dの鑑別疾患を除外したもの。

参考文献

  • 1) The International Clinical Consortium on FOP: The Medical Management of Fibrodysplasia Ossificans Progressiva: Current Treatment Considerations. Clin Proc Intl Clin Consort FOP 3:1-82, 2008
  • 2) Nakashima Y, Haga N, Kitoh H, Kamizono J, Tozawa K, Katagiri T, Susami T, Fukushi J, Iwamoto Y: Deformity of the great toe in fibrodysplasia ossificans progressiva. J Orthop Sci 15: 804-809, 2010
  • 3) Pignolo RJ, Shore EM, Kaplan FS: Fibrodysplasia ossificans progressiva: clinical and genetic aspects. Orphanet J Rare Dis 6: 80, 2011
  • 4) Mishima K, Kitoh H, Haga N, Nakashima Y, Kamizono J, Katagiri T, Susami T, Matsushita M, Ishiguro N: Radiographic characteristics of the hand and cervical spine in fibrodysplasia ossificans progressiva. Intractable Rare Dis Res 3: 46-51, 2014
  • 5) Hasegawa S, Nishimura G, Victoria T, Zackai E, Kayserili H, Haga N, Nakashima Y, Miyazaki O, Kitoh H: Characteristic calcaneal ossification: an additional early radiographic finding in infants with fibrodysplasia ossificans progressiva. Pediatric Radiology 46: 1568-1572, 2016
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日