1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: 有機酸代謝異常症
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メチルマロン酸血症

めちるまろんさんけっしょう

methylmalonic acidaemia; MMA

告示

番号:110

疾病名:メチルマロン酸血症

概要・定義

必須アミノ酸であるバリン・イソロイシン代謝経路上の酵素メチルマロニルCoAムターゼ (EC 5.4.99.2; MCM) の活性低下によって、メチルマロン酸をはじめとする有機酸が蓄積し、代謝性アシドーシスに伴う各種の症状を呈する疾患。

疫学

発症後診断例の全国調査(2000年)によれば、国内で最多の有機酸代謝異常症であり1)、タンデムマス新生児スクリーニング試験研究(1997年~2012年,被検者数195万人)による国内頻度は約1/11万人となっている2)。

病因

 アポ酵素障害であるMCM 欠損症 (MIM #251000) と、ビタミンB12 の摂取・腸管での吸収・輸送から、MCM の活性型補酵素アデノシルコバラミン (コバマミド) 合成までの諸段階における障害が知られている。コバラミン代謝異常は相補性解析から cblA~cblG に分類され、 cblA (MIM #251100), cblB (MIM #251110) はアデノシルコバラミン合成だけに障害を来して MCM 欠損症と同様の症状を呈するのに対し、メチオニン合成酵素に必要なメチルコバラミンの合成に影響する cblC, cblE, cblF, cblG はホモシステイン増加を伴い、臨床像を異にする。CblD (MIM #277410) は、責任分子 MMADHC が cblC の責任分子 MMACHC による修飾を受けたコバラミン代謝中間体の細胞内局在(ミトコンドリアまたは細胞質)の振り分けを担っており、メチルマロン酸とホモシステインの両者が増加する病型の他に、ホモシスチン尿症単独型 (variant 1), メチルマロン酸血症単独型 (variant 2) の症例も存在する。本項では、MCM 欠損症, cblA, cblB, および cblD variant 2 を対象として取り扱う。いずれも常染色体劣性遺伝性疾患である。

症状

1)急性代謝不全   典型的には新生児期から乳児期にかけて、ケトアシドーシス・高アンモニア血症などが出現し、哺乳不良・嘔吐・呼吸障害・筋緊張低下などから嗜眠〜昏睡など急性脳症の症状へ進展する。 2)中枢神経症状   急性代謝不全の後遺症や慢性進行性の影響によって精神運動発達遅滞を呈することが多い。両側大脳基底核病変による不随意運動が出現することもある。 3)その他の症状   尿細管間質性腎炎による腎機能低下が緩徐に進行し、腎不全に至りうる。   他に心筋症・膵炎なども報告されている。

診断

1)血液検査  急性期にはアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシス・ケトーシス・高アンモニア血症・汎血球減少・低血糖などを認める。高乳酸血症や血清アミノトランスフェラーゼ (AST, ALT) 上昇を伴うことも多い。 2)化学診断 [1]タンデムマスによる血中アシルカルニチン分析(図1)  プロピオニルカルニチン(C3)の増加(プロピオン酸血症と共通の所見) [2]GC/MS による尿中有機酸分析(図1)  ・メチルマロン酸の排泄増加(プロピオン酸血症との鑑別所見)  ・3-ヒドロキシプロピオン酸・プロピオニルグリシン・メチルクエン酸などの   排泄増加(プロピオン酸血症と共通の所見) [3]血清ビタミンB12 濃度,血漿総ホモシステイン濃度(図2)  ビタミンB12 欠乏(栄養性あるいは吸収・輸送障害)が否定され、血漿総ホモシステイン濃度が正常であれば、MCM 欠損症,cblA, cblB, cblD variant 2 のいずれかによるメチルマロン酸血症と考えられる。   3)酵素診断  酵素活性は末梢血リンパ球や培養皮膚線維芽細胞を用いてアデノシルコバラミン共在下で測定され、反応低下があればMCM 欠損症と確定する。化学診断による確実例で酵素活性が正常であれば、cblA, cblB, cblD variant 2 のいずれかと考えられる。 4)遺伝子診断  コバラミン代謝異常によるメチルマロン酸血症と判定された場合、原因分子の確定には遺伝子解析 (cblA → MMAA, cblB → MMAB, cblD → MMADHC) が必要である。

治療

1) 急性代謝不全発症時の治療  救命救急医療としての対応を取りながら、以下のような治療を行う。 [1]異化亢進の抑制 すべてのタンパク摂取を中止。中心静脈路を確保の上、10%以上のブドウ糖を含む輸液で十分なエネルギーを補給する。 [2]代謝性アシドーシスの補正 [3] L-カルニチン投与  ・50−100mg/kg/回×3回/日静注  ・すぐに入手できない場合は 100−150mg/kg/日 内服 [4]水溶性ビタミン:診断確定前から投与開始。確定後はビタミンB12を除いて中止。  ・チアミン 100−200 mg/日  ・リボフラビン 100−300 mg/日  ・ビタミンC 120 mg/kg/日  ・ビオチン 5−20 mg/日  ・ビタミンB12 ヒドロキソコバラミンまたはシアノコバラミン 1−2mg/日 [5]血液浄化療法  以上の治療開始後も代謝性アシドーシスや高アンモニア血症の改善傾向が乏しい場合は、持続血液透析(CHD)または持続血液透析濾過(CHDF)を速やかに開始する。 2) 慢性期の治療 [1]タンパク制限食  エネルギーおよびタンパク量の不足分は、バリン・イソロイシン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去ミルク(雪印 S-22)などで補う。 [2]L-カルニチン 50-150mg/kg/日(分3)  血清(または濾紙血)遊離カルニチン濃度を 50μmol/L 以上に保つ。 [3]腸内細菌によるプロピオン酸産生の抑制 ・メトロニダゾール 10mg/kg/日(分3) 耐性菌出現防止のため 4日服薬/3日休薬,1週間服薬/3週間休薬 などとする。 ・ラクツロース 0.5-2mL/kg/日(分3) [4]ビタミンB12   ビタミンB12 反応性の症例には、ヒドロキソコバラミン・シアノコバラミン・コバマミドのいずれか 10−40mg/日 を内服させる。 [5]肝移植・腎移植  早期発症の重症例を中心に生体肝移植を考慮する。腎機能低下例の肝移植は成績不良のため、腎単独移植または肝腎同時移植が選択される。

予後

 ・新生児期発症の重症例は、急性期死亡ないし重篤な障害を遺すことが少なくない。  ・遅発例も急性発症時の症状が軽いとは限らず、治療が遅れれば障害発生の危険が   高くなる。  ・代謝不全の管理に関わらず腎機能の低下が進行し、腎不全に至りうる。

成人期以降

・ 肝移植実施例も含め、食事療法を続ける必要がある。 ・ 飲酒,過度の運動は避ける。 ・ 妊娠,出産は厳重な管理が必要である。

参考文献

1) 高柳正樹:有機酸代謝異常症の全国調査.平成11年度厚生労働科学研究報告書,2000. 2) 山口清次:タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)平成24年度報告書,2013.
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会