診断方法
「診断の手引き」 臨床所見、生化学分析、酵素活性測定、遺伝子解析に基づいて行う。
- 急性代謝不全 典型的には新生児期から乳児期にかけて、ケトアシドーシス・高アンモニア血症などが出現し、哺乳不良・嘔吐・呼吸障害・筋緊張低下などから嗜眠〜昏睡など急性脳症の症状へ進展する。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患などが契機となることが多い。コントロール困難例では経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。
- 中枢神経症状 急性代謝不全の後遺症として、また代謝異常が中枢神経系に及ぼす慢性進行性の影響によって、全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多い。急性増悪時、あるいは明らかな誘因なく、両側大脳基底核病変を生じて、不随意運動が出現することもある。
- その他の症状 尿細管間質性腎炎による腎機能低下が緩徐に進行し、腎不全に至りうる。 他に心筋症・膵炎なども報告されている。
- 血液検査 急性期にはアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシス・ケトーシス・高アンモニア血症・汎血球減少・低血糖などを認める。高乳酸血症や血清アミノトランスフェラーゼ (AST, ALT) 上昇を伴うことも多い。
- 化学診断
- 1)
- タンデムマスによる血中アシルカルニチン分析 プロピオニルカルニチン (C3-AC) の増加を認める。 非特異的変化でないこと示す所見として C3/C2 比の上昇を伴う。 ※これらはプロピオン酸血症に共通する所見である。
- 2)
- GC/MS による尿中有機酸分析 メチルマロン酸排泄の増加を認め、プロピオン酸血症との鑑別所見となる。 他に 3-ヒドロキシプロピオン酸・プロピオニルグリシン・メチルクエン酸などの排泄増加を認めるが、これらはプロピオン酸血症と共通の所見である。
- 3)
- 血清ビタミンB12 濃度,血漿総ホモシステイン濃度 ビタミンB12 欠乏(栄養性あるいは吸収・輸送障害)が否定され、血漿総ホモシステイン濃度が正常であれば、MCM 欠損症,cblA, cblB, cblD variant 2 のいずれかによるメチルマロン酸血症と考えられる。
- 酵素診断 末梢血リンパ球や培養皮膚線維芽細胞の破砕液にメチルマロニルCoAとアデノシル コバラミンを添加した測定系で、酵素反応の低下が認められれば、MCM 欠損症と確定する。メチルマロン酸血症の化学診断が確実で、上記の方法による酵素活性が正常であれば、cblA, cblB, cblD variant 2 のいずれかと考えられる。
- 遺伝子診断 化学診断・酵素診断にてコバラミン代謝異常によるメチルマロン酸血症と判定された場合、原因分子の確定には遺伝子解析 (cblA → MMAA, cblB → MMAB, cblD → MMADHC) が必要である。
当該事業における対象基準
疾患名に該当する場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会