診断の手引き

  1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 難治てんかん脳症
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遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん

ゆうそうせいしょうてんほっさをともなうにゅうじてんかん

Epilepsy of infancy with migrating focal seizures; EIMFS

告示

番号:76

疾病名:遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん

診断基準

A. 症状

  1. 発作中に発作焦点部位が移動する部分発作(多くは運動発作)。
  2. しばしば無呼吸、顔面紅潮、流涎などの自律神経症状を伴う。
  3. 発作は群発ないしシリーズをなして頻発する。
  4. 発症前の発達は正常であるが、重度の精神運動発達遅滞を残す。

B. 検査所見

1. 血液・生化学的検査:
特異的所見なし。
2. 画像検査:
初期には異常なく、病変はない。進行すると脳萎縮を示す。
3. 生理学的検査:
初期にはてんかん性波はまれで、背景波が徐波化を示す。その後、多焦点性棘波が出現する。発作中には脳波焦点が対側又は同側の離れた部分に移動し、一つの発作時発射が終わる前に次の発作時発射がはじまる。

C. 鑑別診断

鑑別する疾患は、新生児期のけいれん、急性脳炎・脳症、ピリドキシン依存症、ピリドキシンリン酸依存症、アルパース(Alpers)病、乳児の良性部分てんかん、家族性又は非家族性良性新生児けいれん、家族性良性乳児けいれん、早期ミオクロニー脳症。

D. 遺伝学的検査

KCNT1SCN1APLCB1SCN2ASCN8ATBC1D24SLC25A22SLC12A5QARS などの変異。

診断のカテゴリー

Definite:
生後 6か月未満の児に A. 1. がみられ、B. 3. が確認されれば診断は確定する。

参考文献

  1. 須貝研司.片側巨脳症.希少てんかんの診療指標.日本てんかん学会, 東京, 診断と治療社, 2017:38-40.

対象の基準(疾病の状態の程度)

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児神経学会