診断の手引き

  1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 難治てんかん脳症
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環状20番染色体症候群

かんじょうにじゅうばんせんしょくたいしょうこうぐん

Ring chromosome 20 syndrome

告示

番号:65

疾病名:環状20番染色体症候群

診断基準

A. 症状

  1. 非痙攣性てんかん重積状態:動揺性の意識障害や認知障害を示し、口周囲などのミオクローヌスを伴うことがある。1回の持続は数分から数十分で、1時間以上続くことは少ない。発作は頻回でしばしば日に何回もみられる。
  2. 小型又は大型の運動発作:小児期には自動症や運動現象を伴う短い複雑部分発作や幻視や恐怖感などがみられることがある。夜間睡眠時に多い。全身痙攣発作が見られることもある。
  3. 精神遅滞や衝動性・攻撃性などの行動障害を呈することもある。特徴的な奇形はなく、あっても軽微である。

B. 検査所見

1. 血液・生化学的検査所見
特異的所見なし。
2. 画像検査所見
特異的所見なし。
3. 生理学的所見
脳波では高振幅徐波や鋭波が単発あるいは短い連続で頻回に出現し、前頭・側頭部に 優位性を示したり、側方性を示すこともあるが、容易に両側化する。小児では比較的脳波異常が乏しいこともあるが、長じるにつれ顕著となる。発作時の脳波は長時間持続する両側性の高振幅徐波であり、その周波数はしばしば変動し、小棘波や棘徐波複合が混在する。
4. 病理所見
外科的切除標本で異常が指摘されたことはない。
5. 染色体検査(G-band)
環状20番染色体が確認されれば診断は確定する。多くの場合、正常20番染色体と混在するモザイクを呈する。環状染色体の割合は0.5~100%である。

C. 鑑別診断

レノックス・ガストー症候群、前頭葉てんかん、非痙攣性てんかん重積状態を示す他のてんかん、非てんかん性心因性発作などを鑑別する。

診断のカテゴリー

Definite:
A. 1、2及びB.3 から本症候群を疑い、B.5(染色体検査)で確定する。

参考文献

  1. Inoue Y. et al. Ring chromosome 20 and nonconvulsive status epilepticus. A new epileptic syndrome. Brain: a journal of neurology,1997; 120(6): 939-953.
  2. Ville D. et al. Early pattern of epilepsy in the ring chromosome 20 syndrome. Epilepsia, 2006; 47(3): 543-549.
  3. Vignoli A. et al. Epilepsy in ring chromosome 20 syndrome. Epilepsy research, 2016; 128: 83-93.

対象の基準(疾病の状態の程度)

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児神経学会