1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 難治てんかん脳症
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環状20番染色体症候群

かんじょうにじゅうばんせんしょくたいしょうこうぐん

Ring chromosome 20 syndrome

告示

番号:65

疾病名:環状20番染色体症候群

疾患概念

主症状は、難治な非痙攣性てんかん重積状態(意識が曇り、適切な行動ができない)であり、ミオクローヌス、小型又は大型の運動発作、焦点意識減損発作、非対称性の強直発作、過運動発作を伴うこともある。てんかんの平均発症年齢は 6歳(0~24 歳)。特徴的な脳波異常を伴う。さまざまな程度の知的障害や行動障害を伴うことがある。

疫学

この症候群の発症率や有病率についての報告はない。症例報告はさまざまな地域からなされ、性差なくみられる。

病因

20番染色体が 0.5~100%の率で環状になっている。原因は不明であり、遺伝子異常も明らかでない。

病理・病態

環状20番染色体がてんかん発作を起こす機序は不明である。

臨床症状

特徴は薬剤抵抗性のてんかんである。小児期には小型または大型の運動発作(強直発作、ミオクローヌス、自動症の目立つ焦点意識減損発作、強直間代発作など)運動性の症状が主である。発作に恐怖感やその表現、幻視などを伴うことがある。10歳前後から非けいれん性てんかん重積状態(nonconvulsive status epilepticus: NCSE)が出現し、次第に主発作型となる。10歳前後で発病する場合は最初からNCSEを主発作型とすることもある。NCSEの発作時には動揺性の意識障害や認知障害を示し、口周囲、眼瞼、手足、肩などに反復性のミオクローヌスを伴うことがある。持続は数分から数十分(多くは1時間以内)だが数時間に及ぶこともある。日単位あるいは週単位で頻発する。

検査所見

脳波では高振幅徐波や鋭波が単発あるいは短い連続で頻回に出現し、前頭・側頭部に 優位性を示したり、側方性を示すこともあるが、容易に両側化する。小児では比較的脳波異常が乏しいこともあるが、長じるにつれ顕著となる。非けいれん性てんかん重積状態の発作時脳波は長時間持続する両側性の高振幅徐波であり、その周波数はしばしば変動し、小棘波や棘徐波複合が混在する。 血液検査や画像検査に特異的な所見はない。染色体検査で環状20番染色体が確認される。

診断

発作症状と脳波所見から本疾患を疑い、染色体検査(G-band)で環状20番染色体を確認することで診断する。正常と環状体のモザイクであることがほとんどである。

診断の際の留意点/鑑別診断

運動要素の目立つ発作症状と脳波所見から前頭葉てんかんやレノックス・ガストー症候群などが鑑別疾患となる。

合併症

染色体異常であるが体表奇形はまれで家族歴も乏しい。知的には正常からさまざまな程度の低下を示す。

治療

てんかん発作に対して抗てんかん薬(バルプロ酸、ラモトリギンなど)をはじめ種々の薬物が用いられるが極めて薬剤抵抗性であり、発作の寛解は得がたい。切除外科治療は無効である。

予後

10~15歳頃には脳波および発作症状はほぼ固定し、その後進行性に増悪することは少ないが、年齢とともに発作が軽減することもなく、てんかんは難治なままである。痙攣重積状態になり重篤な後遺症を残したり、死に至る転帰をとることがまれにある。

研究班

平成26~28年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究」
平成29~31年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「稀少てんかんに関する調査研究」
令和2~4年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「稀少てんかんに関する包括的研究」

成人期以降の注意点

頻発する非痙攣性てんかん重積状態では、動作緩慢、発語減少、保続、注意散漫、反応の遅延、あるいは不機嫌を示したり、不適切な応答や行動をすることが少なくないため、社会的な支障が極めて大きい。

参考文献

  1. Inoue Y. et al. Ring chromosome 20 and nonconvulsive status epilepticus. A new epileptic syndrome. Brain: a journal of neurology,1997; 120(6): 939-953.
  2. Ville D. et al. Early pattern of epilepsy in the ring chromosome 20 syndrome. Epilepsia, 2006; 47(3): 543-549.
  3. Vignoli A. et al. Epilepsy in ring chromosome 20 syndrome. Epilepsy research, 2016; 128: 83-93.
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児神経学会