診断基準
頭部MRI検査で大脳皮質形成異常、異所性灰白質、脳梁欠損を確認し、眼底検査で網脈絡膜ラクナを確認する。
全例に存在(もしくはおそらく存在)する診断の必須項目は、網脈絡膜ラクナと皮質形成異常(大部分は多小脳回)、脳室周囲(と皮質下)異所性灰白質の三項目である。脳梁欠損は主要徴候の一つではあるが、皮質形成異常や異所性灰白質を伴わない脳梁欠損単独では、アイカルディ症候群の診断には不十分である。
半数以上の患者は乳児期のてんかん発作で発症するが、最初の発作は強直間代発作や焦点発作などてんかん性スパズム以外の発作が約半数を占め、18例中11例の初回脳波は正常であったと報告されている。点頭てんかん(てんかん性スパズム)や知的障害などの神経症状は、皮質形成異常と異所性灰白質による二次的な徴候と考えられ、てんかん発作型は他の発作型でも代替可能であり、てんかん発作の発症前であっても、脳と眼の形成異常所見が典型的であれば、アイカルディ症候群の診断は可能である。
また多くは女児であるが、男児例も報告されており、性別を診断に含めるべきではない。
診断基準は以下の通りである。
A. 症状
主要徴候
- スパズム発作※
- 網脈絡膜ラクナ(lacunae)※※
- 視神経乳頭(と視神経)のcoloboma、しばしば一側性
- 脳梁欠損(完全/部分)
- 皮質形成異常(大部分は多小脳回)※※
- 脳室周囲(と皮質下)異所性灰白質※※
- 頭蓋内嚢胞(たぶん上衣性)半球間もしくは第三脳室周囲
- 脈絡叢乳頭腫
支持徴候
- 椎骨と肋骨の異常
- 小眼球または他の眼異常
- 左右非同期性 'split brain' 脳波(解離性サプレッション・バースト波形)
- 全体的に形態が非対称な大脳半球
- ※
- 他の発作型(通常は焦点性)でも代替可能
- ※※
- 全例に存在(もしくはおそらく存在)
B. 検査所見
- 画像検査所見:
- 脳梁欠損をはじめとする中枢神経系の異常(脳回・脳室の構造異常、異所性灰白質、多小脳回、小脳低形成、全前脳胞症、孔脳症、クモ膜嚢胞、脳萎縮など)がみられる。
- 生理学的所見:
- 脳波では左右の非対称もしくは非同期性の所見がみられる。ヒプスアリスミア、非対称性のサプレッション・バーストもしくは類似波形がみられる。
- 眼所見:
- 網脈絡膜ラクナが特徴的な所見。そのほか、視神経乳頭の部分的欠損、による拡大、小眼球などがみられる。
- 骨格の検査:
- 肋骨の欠損や分岐肋骨、半椎、蝶形椎、脊柱側弯などがみられる。
C. 鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
線状皮膚欠損を伴う小眼球症(MLS)。先天性ウイルス感染。
診断のカテゴリー
A. 1、2、4 を必須とし、さらに A. 5、6、7、8 のいずれかの所見を認めた場合に診断できる。
参考文献
- Aicardi J. Aicardi syndrome. Brain Dev, 2005;27:164-171
- Chen TH. Increasing recognition of cases with male Aicardi syndrome. J Child Neurol, 2010;25:129
- Palmer L, et al. Aicardi syndrome: presentation at onset in Swedish children born in 1975-2002. Neuropediatrics, 2006;37:154-158
- Rosser TL, et al. Aicardi syndrome: spectrum of disease and long-term prognosis in 77 females. Pediatr Neurol, 2002;27:343-346
- 加藤光広. Aicardi症候群. 稀少てんかんの診療指標. 日本てんかん学会 編. 東京, 診断と治療社, 2017:86-89.
対象の基準(疾病の状態の程度)
運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
- 版
- :第1版
- 更新日
- :2021年11月1日
- 文責
- :日本小児神経学会