診断の手引き

  1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 筋ジストロフィー
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45から51に掲げるもののほか、筋ジストロフィー

そのたきんじすとろふぃー

Muscular dystrophy

告示

番号:17

疾病名:10から16までに掲げるもののほか、筋ジストロフィー

状態の程度

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)が続く場合又は治療として強心薬、利尿薬、抗不整脈薬、末梢血管拡張薬、β遮断薬、肺血管拡張薬、呼吸管理(人工呼吸器、気管切開術後、経鼻エアウェイ等の処置を必要とするものをいう.)、酸素療法、中心静脈栄養若しくは経管栄養の一つ以上を継続的に行っている場合

診断基準

A 症状

臨床症状はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に類似するが、発症時期や進行がより遅く、歩行不能時期は少なくとも15歳以降である.DMDと鑑別が困難であるような早期発症例から、成人後期発症まで重症度に幅がある.発症すると緩徐に運動機能低下を示すことも多い.小児期にたまたま行った検査によって未発症の状態で高CK血症を認めたことが契機になり診断に至る例も多い.運動が誘因となり下腿などの筋痛を認めることが多く、日常生活に影響を及ぼすこともある.小児期であっても心筋症を発症することがある.知的障害、発達障害、精神症状を合併する場合もある.


B 検査所見

a. 血清CK(クレアチンキナーゼ)
筋の壊死を反映し、大半の筋ジストロフィーで高値を示すが、その程度は筋ジストロフィーのタイプによっておよそ決まっている.BMDの場合には数百~数千台の高値を示す場合が多い.
b. 筋電図
安静時活動電位、低電位、最大振幅の低下、早期動員など非特異的な筋原性の所見を認める.
c. 遺伝子診断
ジストロフィン遺伝子変異の種類はエクソン単位の欠失が約60%、重複が10%、30%が点変異などの微小変異である.保険適用されており全エクソンの欠失・重複が判定できるMLPA (Multiplex Ligation Probe Amplification) 法を用いることで、約70%の患者で遺伝子診断が可能である.DMDとBMDの違いは、エクソン単位の欠失・重複の合計塩基数が3の倍数かどうか、DMDの場合には3の倍数でない(out-of-frame)、BMDの場合には3の倍数となる(in-frame)というframeshift仮説で多くは説明可能である.
d. 筋生検
侵襲的な検査であるため、適応をよく検討したうえで施行する.BMDではジストロフィン蛋白のサイズや量の減少を認める.ジストロフィン蛋白レベルの評価は筋組織を用いたジストロフィン免疫染色やウエスタンブロット法などで評価する.


C 遺伝学的検査等

Bの項で解説したように、ジストロフィン遺伝子変異の種類はエクソン単位の欠失が約60%、重複が10%、30%が点変異などの微小変異である.保険適用されており全エクソンの欠失・重複が判定できるMLPA (Multiplex Ligation Probe Amplification) 法を用いることで、約70%の患者で遺伝子診断が可能である.DMDとBMDの違いは、エクソン単位の欠失・重複の合計塩基数が3の倍数かどうか、DMDの場合には3の倍数でない(out-of-frame)、BMDの場合には3の倍数となる(in-frame)というframeshift仮説で多くは説明可能である.


D 鑑別診断

肢帯型やデュシェンヌ型などの他の筋ジストロフィーや先天性ミオパチー、脊髄性筋萎縮症などが鑑別診断にあげられる.


E-1 確実例

1.筋病理にて筋ジストロフィーに合致する所見を認め、ジストロフィン蛋白のサイズ、もしくは量の減少を認める.
2.ジストロフィン遺伝子に病因となる変異を認める
3.同一家系内に遺伝学的又は免疫学的検索で診断の確定した類症者が存在し、遺伝形式が当該疾患と矛盾しない.
4.デュシェンヌ型筋ジストロフィーが否定される.
1、2、3のいずれかを満たし、かつ4を満たす場合に本症と診断する


E-2 疑い例

本疾患はジストロフィン異常症の一つであり、遺伝学的、もしくが筋病理でジストロフィン異常を示す必要があり.疑い例を設定する必然性はない.

参考文献

  • 森まどか.小児筋疾患診療ハンドブック.診断と治療社,東京,2009,105-110
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児神経学会