1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 筋ジストロフィー
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45から51に掲げるもののほか、筋ジストロフィー

そのたきんじすとろふぃー

Muscular dystrophy

告示

番号:17

疾病名:10から16までに掲げるもののほか、筋ジストロフィー

概念・定義

臨床症状はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に類似するが、発症時期や進行がより遅く、歩行不能時期は少なくとも15歳以降である.DMDと鑑別が困難であるような早期発症例から、成人後期発症まで重症度に幅がある.発症すると緩徐に運動機能低下を示すことも多い.小児期にたまたま行った検査によって未発症の状態で高CK血症を認めたことを契機に診断に至る例も多い.

病因

ジストロフィン遺伝子変異に由来する筋ジストロフィーである。その種類はエクソン単位の欠失が約60%、重複が10%、30%が点変異などの微小変異である.保険適用されており全エクソンの欠失・重複が判定できるMLPA (Multiplex Ligation Probe Amplification) 法を用いることで、約70%の患者で遺伝子診断が可能である.DMDとBMDの違いは、エクソン単位の欠失・重複の合計塩基数が3の倍数かどうか、DMDの場合には3の倍数でない(out-of-frame)、BMDの場合には3の倍数となる(in-frame)というframeshift仮説で多くは説明可能である.

疫学

日本における疫学情報は存在しないが3000名程度と推測される.アイルランドにおける検討で10万あたり2.2と報告されている.

臨床症状

臨床症状はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に類似するが、発症時期や進行がより遅く、歩行不能時期は少なくとも15歳以降である.DMDと鑑別が困難であるような早期発症例から、成人後期発症まで重症度に幅がある.発症すると緩徐に運動機能低下を示すことも多い.小児期にたまたま行った検査によって未発症の状態で高CK血症を認めたことが契機になり診断に至る例も多い.運動が誘因となり下腿などの筋痛を認めることが多く、日常生活に影響を及ぼすこともある.小児期であっても心筋症を発症することがある.知的障害、発達障害、精神症状を合併する場合もある.

検査所見

a. 血清CK(クレアチンキナーゼ) 筋の壊死を反映し、大半の筋ジストロフィーで高値を示すが、その程度は筋ジストロフィーのタイプによっておよそ決まっている.BMDの場合には数百~数千台の高値を示す場合が多い. b. 筋電図 安静時活動電位、低電位、最大振幅の低下、早期動員など非特異的な筋原性の所見を認める. c. 遺伝子診断 ジストロフィン遺伝子変異の種類はエクソン単位の欠失が約60%、重複が10%、30%が点変異などの微小変異である.保険適用されており全エクソンの欠失・重複が判定できるMLPA (Multiplex Ligation Probe Amplification) 法を用いることで、約70%の患者で遺伝子診断が可能である.DMDとBMDの違いは、エクソン単位の欠失・重複の合計塩基数が3の倍数かどうか、DMDの場合には3の倍数でない(out-of-frame)、BMDの場合には3の倍数となる(in-frame)というframeshift仮説で多くは説明可能である. d. 筋生検 侵襲的な検査であるため、適応をよく検討したうえで施行する.BMDではジストロフィン蛋白のサイズや量の減少を認める.ジストロフィン蛋白レベルの評価は筋組織を用いたジストロフィン免疫染色やウエスタンブロット法などで評価する.

診断の際の留意点

遺伝子診断によって確定診断が得られる場合が大半であるが、本人に加えて家族の情報も同時に得られる場合がある点が、他の検査と大きく異なる特徴である.母や母方の親族の保因者の存在の可能性の念頭に置く必要もある.そのような面からも、遺伝子解析の前には遺伝学と該当する疾患に精通した医師による検査前カウンセリングが望ましい.診断後の本人、家族への心理的な面も含むケアも非常に重要である.必要に応じて専門医への紹介も検討する.

治療

根本的治療法は現在までのところ見いだされていない.必要に応じて、リハビリテーション、呼吸障害、心機能障害や側弯や関節拘縮に対する治療を行う.デュシェンヌ型で承認されているステロイド治療についてはエビデンスに乏しい面があるが使用されている場合がある。プレドニゾロンは本疾患に承認はされていないものの保険上は認めるとの通知がなされている。

合併症

小児期にも心筋症を合併する場合があり定期的な評価を行う必要がある。呼吸障害は小児期には稀である。

予後

小児期には通常生命予後は問題ない。成人期以降になると心筋症や呼吸不全の合併、重症度が予後を規定する。

成人期以降の注意点

主に成人期以降、早ければ10歳代に運動機能低下、心臓合併症、呼吸機能低下などの問題を生じてくるので、定期的な評価、必要に応じてリハビリテーションを行う.適切な時期に成人診療科への移行を検討する.

参考文献

  • 森まどか.小児筋疾患診療ハンドブック.診断と治療社,東京,2009,105-110
  • Lefter S. A population-based epidemiologic study of adult neuromuscular disease in the Republic of Ireland. Neurology. 2017;88:304-313.
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児神経学会