診断方法
重篤なケトアシドーシス発作をきたした例で
一般検査所見:
ケトアシドーシス時
著しい代謝性アシドーシス(pH<7.3,HCO3<15mmol/L)
典型例ではpH<7.2, HCO3<10mmol/Lを示す
総ケトン体>7mM(日本でmmol/Lで示されることが多いので7000 mmol/L以上)
典型例では10mMを超える
遊離脂肪酸<<総ケトン体
遊離脂肪酸/総ケトン体比は0.3を切ることが多い.
軽度高アンモニア血症 アンモニアは200-400μg/dl 程度
血糖 高血糖~低血糖
非発作時
所見なし
診断の根拠となる特殊検査
①有機酸分析:典型例ではチグリルグリシン,2−メチルー3-ヒドロキシ酪酸,2-メチルアセト酢酸の排泄増加がみられる.2-メチルアセト酢酸は不安定で検出されないこともある.
②タンデムマスによるアシルカルニチン分析:C5:1かつC5-OHの上昇を認める.
③酵素活性,イムノブロット:
ミトコンドリアアセトアセチルーCoAチオラーゼ(T2)の著しい低下(正常の20%以下)
もしくはイムノブロットでT2蛋白の著しい低下(正常の20%以下)
④遺伝子解析:2アレルに病因となる変異が同定される.
診断基準
ケトアシドーシスをきたし,診断の根拠となる特殊検査の①もしくは②を認めるものを化学診断例とし,④⑤のどちらかを満たすものを確定例とする.
化学診断例も臨床的には確定診断例と同等に扱う.新生児マススクリーニングで疑われた症例も同様に診断する.
鑑別診断としてサクシニル-CoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ欠損症が同様のケトアシドーシス発作をきたす疾患である.有機酸分析,アシルカルニチン分析所見は非特異的である.酵素活性,遺伝子解析で最終的に鑑別する. 2-メチル-3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ(2M3HBD)欠損症は有機酸分析、アシルカルニチン分析上での鑑別診断となる.チグリルグリシン,2メチル−3−ヒドロキシ酪酸の異常排泄が認められ,2-メチルアセト酢酸は検出出来ないという有機酸分析所見をとり,鑑別が必要となる.こちらは急激に進行する精神、運動機能の退行、痙攣、失明、進行性心筋症を示すX染色体劣性遺伝性疾患であり、β-ケトチオラーゼ欠損症と異なり予後不良の疾患である.臨床像が異なるが,鑑別は酵素活性,遺伝子解析をおこなう.
当該事業における対象基準
疾患名に該当する場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会