診断方法
主症状
さまざまなリンパ節、あるいはリンパ節外、皮膚などに発生する。
小児濾胞性リンパ腫(Pediatric follicular lymphoma)
病理組織学的検査:
小児濾胞性リンパ腫は成人と異なり、大部分がgrade2あるいは3である。3~9歳ではexpansile pattern(膨張性パターン)、11~13歳で成人と同じinfiltrative pattern(浸潤性パターン)をとるとの報告がある。大きな濾胞状の増殖パターンが認められ,反応性濾胞過形成との鑑別を要する。マントル層が減少していること、濾胞に暗調、明調という極性がみられないこと、大型細胞の比率が高いこと、濾胞の大きさがそろっていて、密在していることなどは、濾胞性リンパ腫の特徴である。いわゆるstarry sky像は反応性濾胞の胚中心で認められるが、ハイグレードの濾胞性リンパ腫でもみられる。CD21,CD23陽性の濾胞樹状細胞のメッシュワークが認められないびまん性の増殖を示す部分がある場合には、diffuse large B-cell lymphoma(DLBCL; びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)が共存するとみなし、その割合を%で記載する。
節外性NK/T細胞リンパ腫-鼻型(Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type)
病理組織学的検査:
組織像として、粘膜組織の広範な潰瘍化をみることが多い。浸潤はびまん性であり、血管中心性、血管破壊性の増殖様式が約半数にみられる。血管のフィブリノイド変化、凝固壊死、apoptoid body(アポトーシス小体)はしばしば認められ、ケモカイン、サイトカインなどの因子の関連が示唆されている。
腫瘍細胞は多様で、小型、中型、大型、未分化大細胞型まであり、それらの混在するものもみられる。多くの症例で腫瘍細胞は中型細胞、または小型細胞と大型細胞の混在を示し、典型的な腫瘍細胞は細長く伸びた核を有し、核膜は不規則な切れ込みを示す。核小体は通常、目立たないか小さい。細胞質は中等量で淡明であり、ギムザ染色捺印標本でアズール顆粒が認められる。小型リンパ球、形質細胞、好酸球、組織球など炎症細胞の著明な浸潤がみられ、多彩な細胞構成を示す。EBER in situ hybridizationによるEBVの証明が重要である。EBVは腫瘍細胞に認められ、通常clonal esisponal formで存在するためサザンブロット検索によるクローナリティーの検索が診断に有用である。
地理病理学的偏在にかかわらず常にEBV陽性であり、その病院的関与が示唆されている。腫瘍細胞はCD2+、CD56+、表面CD3-細胞質CD3ε+である。また、細胞傷害性分子(グランザイムB、TIA-1、パーフォリンなど)が陽性である。CD4、CD5、CD8、T細胞受容体(TCR)β、CD57は陰性である。一部の症例でCD16の発現をみることがある。CD56はNK/T細胞リンパ腫のマーカーとして有用であるが特異性はなく、ほかのT細胞リンパ腫、とくに細胞傷害性分子陽性リンパ腫(肝脾型T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫など)でもしばしば陽性であり、注意が必要である。
TCRおよび免疫グロブリン遺伝子は胚細胞型である。病型特異的な染色体異常は知られていないが,最も多い異常はdel(6)(q21q25)またはi(6)(p10)である。しかしこれがprimaryな異常か、進展に関連した異常かは現在不明である。アレイCGHでは2q増幅、1p36.23-p36.33、6q16.1-q27、4q12、5q34-q35.3、7q21.3-q22.1、11q22.3-q23.3、15q11.2-q14の欠損が報告されている。
以下に各亜型の特徴を記載するが、治療開始にあたっての病理診断では必ずしも記載を必要としない中心芽球亜型centroblastic variant は、中心芽球centroblast/non-cleaned cellと呼ばれる大型のリンパ腫細胞からなる。円形や類円形核は水疱状で核クロマチンは核縁部に集合する。核小体は2~4 個認められ、核膜に接することが多い。細胞質に乏しく両染性から好塩基性、ときに核は多分葉状を呈する。免疫芽球亜型immunoblastic vatiant は、90%以上の細胞が核中心性の単一核小体と好塩基性細胞質を有する免疫芽球様細胞からなる。
免疫芽球様細胞と同じ免疫グロブリン軽鎖を発現する形質芽球plasmablast、形質細胞、ならびに小型から中型の形質細胞様リンパ球が混在するが、中心芽球centroblast は10%以内である。T 細胞・組織球豊富亜型T-cell or histiocyte rich variant は、腫瘍細胞に比較しておびただしい反応性T 細胞、マクロファージの出現をみる。腫瘍細胞は大型で、中心芽球、免疫芽球、ホジキンリンパ腫に出現するR-S(Reed-Sternberg)細胞やL&H(lymphocytic and histiocytic)細胞に類似するため、nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma との鑑別が必要となる。未分化大細胞亜型anaplastic variant は、奇異な多形性核を持つCD30陽性の大型円型あるいは多陵形細胞に特徴付けられる亜型で、ときにはR-S 細胞に類似する。
癌細胞のごとく細胞同士の付着性が強く、顕著なリンパ洞内浸潤を示す。EB ウイルス感染と関連性があるが、t(2;5)(p23;q35)やALK(anaplastic lymphoma kinase)蛋白は発現しない。
まれだが、ALK 陽性のDiffuse large B-cell lymphoma 亜型が報告されている。この亜型は形態学的にはimmunoblastic variant に類似しているが、細胞質IgA 陽性所見以外B 細胞マーカーの発現がないこと、CD30 は陰性だがEMA が強陽性になること、ALK 遺伝子の再構成はなく全長のALK 蛋白発現があること、CD4 およびCD57 が陽性となること、aggressive な経過を示すこと等の特徴を示す。
mediastinal large B-cell lymphoma は、胸腺髄質B リンパ球由来とされるリンパ腫で前縦隔に発生する。間質の硬化に伴い小葉性に増殖するのが特徴である。リンパ腫細胞は大型で淡明あるいは両染性の細胞質を有するが、多分葉中心芽球細胞から比較的単調な免疫芽球様細胞まで症例により細胞の大きさや核形状が多彩であり、ときにはR-S 細胞様の巨細胞をみる。免疫組織学的にB 細胞関連抗原(CD19、CD20、CD22、CD79a)が陽性であるが、多くの例で表面および細胞質免疫グロブリンは陰性を示す。陽性の場合はIgG、IgA が多い。CD30 が弱く発現することがある。
末梢性T細胞リンパ腫-非特定型(Peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified)
病理組織学的検査:
形態的、また生物学的に多様なものが含まれている。細胞のサイズの小型のものから大型のもの、またホジキン様巨細胞を含むものもみられる。
- 小細胞型(pleomorphic small cell type)小型の腫瘍細胞の比較的単調なびまん性増殖がみられる。3μmないし5μmの核径で、稀に大型細胞を混在する。腫瘍細胞の増殖としては比較的単調であり、細胞質に乏しく塩基性である。何例かは、豊富な細胞質を持つ淡明細胞の多い症例がみられる。クロマチンは濃く、核小体は通常小さい。核分裂像は少ない。
- 中および大細胞型(pleomorphic, medium-sized and large cell type)頻度的に最も多く、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)との鑑別がきわめて重要である。HTLV-1プロウイルスの検索が必須である。中型(5μmないし8μm)~大型(9μm以上)の異形の目立つ腫瘍細胞のびまん性増殖がみられる。大型が主体をなすものが多い。腫瘍細胞の核には偏在性に深い核の切れ込みがみられ、ときには核異型が強くクラゲないし胎児様といわれる不正な形態を示すものがみられる。核小体は中~大型で、多様である。胞体は豊富で好塩基性のことが多い。ときに好酸球、肥満細胞、形質細胞などが混在する。しばしば多くの核分裂像がみられる。リンパ洞内への浸潤は白血化例に多い。極めて切れ込みの深い脳回状(cerebriform)の形態を示す巨細胞やReed-Sternberg型の巨細胞を見る際にはATLLのことが多く、注意が必要である。
- 免疫芽球型(large cell immunoblastic type)大型の楕円形もしくは円形の核(10~12μm)をもつ、腫瘍細胞の比較邸単調なびまん性増殖がみられる。クロマチンは粗で、腫瘍細胞は1個もしくは数個の中等の核小体が目立ち、細胞質は好塩基性が著明なことが多い。またときには無染色性amorphic(無定形)のものや、淡明な細胞質(淡明細胞)をもつものがみられる。原発のこともあるが、低悪性群のTリンパ腫、特に血管免疫芽球性リンパ腫が二次的にこの型に進展することもある。巨細胞の出現は稀で、ときに好酸球の反応を伴う。組織球が散見され、類上皮細胞の反応の強いものもみられる。しばしば多くの核分裂像が認められる。細血管の反応はあまり目立たない。
- T領域型(T zone type)濾胞は残存し、濾胞間にリンパ腫細胞の増生がみられる。腫瘍細胞は、小型、中型で、核の多形性および不整形がやや目立つ。淡明細胞やReed-Sternberg様の細胞がときとしてみられる。また高内皮細静脈の増生が目立ち、形質細胞、組織球反応、好酸球の炎症細胞もみられる。本態的には血管免疫芽球性リンパ腫に連なるものが含まれる。
- リンパ類上皮細胞(レンネルト)型(lymphoepithelioid (Lennrt's) type)多数の類上皮細胞の小集塊が目立つ。T領域型とは異なり、濾胞の残存はなく、高内皮細静脈の増生、淡明細胞も目立たない。小型細胞のびまん性増殖が主体で、ときに大型芽球を混じる。
- 濾胞型(follicular type)異型の淡明細胞が濾胞内で増殖し濾胞性リンパ腫様にみえる。またnodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma(結節性リンパ腫優位型ホジキンリンパ腫)やnodal marginal zone lymphoma(節性辺縁帯リンパ腫)との鑑別を要することがある。染色体でt(5;9)が報告されている。
免疫学的表型 CD2+CD3+CD5+CD45RO+であり、大多数のものはヘルパー型のCD4+,CD8+をとるとされる。一部にサプレッサー型のCD4-,CD8+のものもみられる。そのほかにCD30が陽性であるものもみられ、未分化大細胞型リンパ腫との鑑別が問題となる。相棒傷害性顆粒に関連するグランザイムB、パーフォリン、TIA-1については、最近、一部にその発現をみるとの報告がある。EBVは陰性であることが多い。多くの症例はTCRαβ陽性である。PTCL-NOSは一般的にfollicular T helper(TFH)の表現型(CD10+,BCL6+PD1+,CXCL13+)を欠くことが多い。遺伝子解析では、T細胞受容体遺伝子(T-cell receptor gene: TCR)βおよびγ鎖の再構成を認める。
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T-cell lymphoma)
病理組織学的検査:
リンパ節の構造は破壊され、HEVの著明な樹枝状増生を伴う異型リンパ球のびまん性増殖が認められる。
これにBリンパ球やB免疫芽球、形質細胞、好酸球、組織球、類上皮細胞などが種々の程度に混在し多彩な細胞構成を示す。FDCの不規則な増殖を伴うことも診断基準の1つとして重要である。腫瘍細胞では淡明細胞の出現が特徴的で診断的価値が高い。腫瘍細胞は末梢性T細胞で、CD2,CD3,CD5,CD45ROなどのT細胞マーカーを種々の程度に発現している。CD4/CD8については陽性細胞が混在するが、一般にCD4陽性のものが優性である。CD56などのNK細胞マーカーおよびT-cell intracellular antigen-1(TIA-1)やグランザイムBなどの細胞傷害性分子マーカーは通常陰性である。FDCの増殖巣はCD21,CD35,CNA.42などの免疫染色により明瞭となる。また本型では効率にEBウイルスが検出され、その陽性細胞数は症例により様々で、感染細胞はB細胞のことが多いがT細胞のこともあり、感染様式は多様である。
皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(Sucutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma)
病理組織学的検査:
多発性皮下結節として発症し、最も多い部位は四肢と体幹である。結節は直径0.5cmから数cmの大きさの幅がある。より大きい結節は壊死となることもある。浸潤はびまん性に皮下組織全体に広がり、通常、真皮と皮下組織の境界は保たれている。典型例では表皮と真皮に浸潤はみられない。臨床的に皮下脂肪織炎、蜂窩織炎、結節性紅斑と誤診されることが多い。また全身症状として、発熱、肝脾腫、初診時より1/3の症例に血球貪食症候群を伴う。そのため汎血球減少がみられる。また病期が進行するにつれて、血球貪食症候群の頻度は増す。予後は不良で、電撃的な経過を示し、血球貪食症候群により死亡することがほとんどで、肝脾腫はみられることがあるが、リンパ節や他の臓器への転移は稀である。腫瘍細胞は円形の核を有し不分明な核小体を持つ小型の細胞から、より大型でクロマチンの豊富な芽球化transformed細胞までいろいろである。腫瘍細胞は中等量の、淡明な細胞質を有する。診断の助けとなるのは、rimmingと呼ばれる個々の脂肪細胞を腫瘍細胞が取り囲む所見である。反応性の組織球は、とくに脂肪組織への浸潤と破壊がある箇所でよくみられる。組織球はしばしば、脂肪の消化物質によって空胞化する。浸潤発情皮下組織に限局しており、真皮は保たれている.この所見は皮膚および皮下組織に浸潤する他のリンパ腫との鑑別に有用である。鑑別として皮膚原発γδT細胞リンパ腫の症例では真皮と表皮の両方に浸潤しうる。腫瘍細胞は、T細胞性であり、通常CD3+,CD8+,グランザイムB、パーフォリン、TIA-1などの細胞傷害性分子を発現している。TCRαβ陽性であり、γδは陰性である。皮膚原発γδT細胞リンパ腫の症例はしばしばCD4,CD8ともに陰性で、CD56陽性である。腫瘍細胞のTCR遺伝子の再構成を示し、EBウイルス陰性である。特異的染色体異常は報告されていない。
診断
原則として、病理組織学的検査により診断する。
鑑別診断
小児濾胞性リンパ腫ではDLBCL、末梢性T細胞リンパ腫-非特定型ではATLL、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫では皮膚原発γδT細胞リンパ腫との鑑別が必要である。
参考文献
- Jaffe ES, Harris NL, Stein H et al. WHO classification of tumors, pathology and genetics, tumors of hematopoietic and lymphoid tissues. IARC press,Lyon, 2001
- 小児腫瘍カラーアトラス 第1巻悪性リンパ腫、白血病および関連病変 日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会編集、金原出版、2002
- 悪性リンパ腫臨床と病理―WHO分類(第4版)に基づいて 吉野正ほか、先端医学社、2009
当該事業における対象基準
組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会