1. 悪性新生物
  2. 大分類: リンパ腫
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18から22までに掲げるもののほか、リンパ腫

そのた、 りんぱしゅ

Other malignant lymphomas

告示

番号:91

疾病名:86から90までに掲げるもののほか、リンパ腫

疾患概念

小児リンパ腫はホジキンリンパ腫 (HL)と非ホジキンリンパ腫 (NHL)に大別されるが、NHLのうち少数例ではあるが、成熟B細胞性リンパ腫,リンパ芽球性リンパ腫,未分化大細胞性リンパ腫以外のものが存在する。それら稀なリンパ腫は、すべてを合計しても小児リンパ腫の数%であるが、比較的よくみられるものとして成熟B細胞由来では、小児濾胞性リンパ腫 (FL),原発性縦隔大細胞リンパ腫 (PMBCL)があり、その他成熟T細胞などを由来とするものは、末梢性T細胞性リンパ腫-非特定型 (PTCL-NOS)、節外性NK/T細胞性リンパ腫(ENKTL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、そして皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫などが挙げられる。

疫学

日本小児白血病リンパ腫グループの18年間のまとめでは、FLが6例、PMBCLが5例、PTCL-NOSが9例、ENKTLが10例で、その他は1例以下であり、いずれも小児NHLの1%未満であった。我が国の成人FLが、悪性リンパ腫の10-15%を占める代表的な組織型であるのとはかなり様相が異なる。小児FLは男児に多いとされ、PTCL-NOS以外は年齢中央値は10-11歳と高い傾向にある。

病因

我が国の小児PTCLの約半数がEBウイルス関連との報告があるが、病因はいまだに明らかになっていない。

臨床症状

小児FLは、成人FLが播種性であるのとは異なり、限局性の頚部あるいは扁桃病変がもっとも多い。PMBCLは進展速度の速い縦隔腫瘤を特徴とする。その他のT細胞系リンパ腫の症状は、無痛性の腫瘤のみから全身へ進展するものまで多彩である。

診断

治療

小児FLに対してはR-CHOPあるいは摘出術が行われ治療反応性は成人に比し良好である。PMBCLは、成人においてはdose-adjusted EPOCH-R (etoposide, prednisone, vincristine, cyclophosphamide, daunorubicin, and rituximab)により無病生存率93%と極めて良好な結果が得られた。しかし、その後の小児における検証では劣後しており、免疫チェックポイント阻害剤など新規薬剤の導入が検討されている。PTCL-NOS, ENKTLなどの末梢性成熟T細胞性リンパ腫に対して推奨される治療は、抗がん剤に加えて造血細胞移植が有効との報告もあるが、症例数が少なく現時点ではデータに基づく知見が不十分であり、症例個々において検討する必要がある。

予後

FLの予後は良好で2年生存率が100%という報告もある。PMBCLはB-NHLの中にあってはもっとも予後不良であり従来の無病生存率は7割弱であった。その後、成人で有効であったEPOCH-Rによる治療を小児PMBCLで行ったが無病生存率は8割程度にとどまった。T細胞系に関しては、末梢性成熟T細胞性リンパ腫としてまとめたものでは治療成績は他のリンパ腫に比し不良であり、5年生存率は50~85%である。

成人期以降の注意点

①再発 ②二次がん ③心機能障害 ④骨粗鬆症・骨壊死 ⑤眼科的異常 ⑥低身長・肥満・耐糖能異常・高血圧 ⑦性腺機能障害 ⑧白質脳症 などが生じ得る。全脳・全脊髄放射線照射によって他に、⑨二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑩内分泌機能障害 などが生じ得る。 ※造血幹細胞移植後の成人期以降の注意点 ①内分泌機能障害 ②成長障害 ③メタボリック症候群 ④不妊症 ⑤心機能障害 ⑥呼吸機能障害 ⑦消化管障害 ⑧肝障害 ⑨腎障害 ⑩眼科的異常 ⑪歯牙異常 ⑫聴力障害 ⑬骨粗鬆症・骨壊死 ⑭慢性移植片対宿主病 ⑮免疫不全 ⑯二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑰二次がん などが生じ得る。

参考文献

  1. Gross TG, Kamdar KY, Bollard CM: Malignant Non-Hodgkin Lymphoma in Children. Blaney SM, Adamson PC, Helman LJ. Pizzo and Poplack’s Pediatric Oncology, 8th Edition, Wolters Kluwer, 2020: 538-553.
  2. 小林良二、田中文子、高嶋能文、他:稀な非ホジキンリンパ腫,日小血会誌24:245-249, 2010.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会