診断方法
主症状
多くの症例は無痛性の表在リンパ節腫脹を契機に診断される。75%の症例で頸部リンパ節腫脹が初発症状であり、同時に腋窩リンパ節腫脹を有する例が約25%、鼠径部リンパ節腫脹を有する症例が約10%。NSCHLの約60%に縦隔病変が認められる。診断時に発熱、体重減少、盗汗(B症状)を認めるのは約40%であり、発熱は診断時の約25%に認められる(Pel-Ebstein型)。結節性硬化型ホジキンリンパ腫では縦隔リンパ節腫脹による呼吸困難、咳嗽、胸痛、嚥下困難、嗄声、上大静脈症候群また胸水、心嚢液貯留が認められることがある。非ホジキンリンパ腫と比較すると節外病変で発見されることはまれ。
検査所見
リンパ節あるいは節外病変の生検により得られた組織の病理学的検索、ないしは骨髄液、脳脊髄液・胸水等に含まれる浮遊細胞の細胞診により診断される。WHO診断に従い、以下の5型に分類される。
- 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 (nodular lymphocyte predominance Hodgkin lymphoma: NLPHL)
- 古典的ホジキンリンパ腫(classical Hodgkin lymphoma)
- 混合型ホジキンリンパ腫(mixed cellularity: MCCHL)
- 結節性硬化型ホジキンリンパ腫(nodular sclerosis: NSCHL)
- リンパ球豊富型ホジキンリンパ腫(lymphocyte-rich: LRCHL)
- リンパ球減少型ホジキンリンパ腫(lymphocyte depletion: LDCHL)
1. 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
結節性増殖形態を背景としてpopcorn細胞あるいはリンパ球優位型細胞、一般的にはlymphocytic and/or histiocytic RS cell(L&H細胞)と呼ばれる特異細胞が散見される。結節性病変部周囲には非腫瘍性のリンパ球や組織球の浸潤が見られる。免疫形質ではCD20、CD79aなどのB細胞マーカーが発現しているがCD30あるいはEBウイルスは証明されない。
2. 古典的ホジキンリンパ腫
比較的少数のホジキン(H)細胞およびReed-Sternberg(RS)細胞(HRS細胞:周囲に明庭を有する大きな核小体を伴う大型細胞、単核のものをホジキン細胞、二核以上の多核のものをRS細胞)の存在と、その背景に認めるリンパ球、組織球、形質細胞、類上皮細胞などの反応性増殖、および血管増生、線維化、壊死など特異的な組織像により定義される。HRS細胞のほとんどすべての症例でCD30陽性、CD15は75-85%で陽性。LCAは通常陰性、CD20は陽性だが腫瘍細胞すべてに陽性になることはない。HRS細胞にEBウイルスが 証明されることがある。疾患特異的な遺伝子異常は認められていない。
混合型ホジキンリンパ腫
HRS細胞の点在とともに組織球性類上皮細胞の増生が顕著。リンパ球、形質細胞、好酸球、組織球などの多彩な炎症細胞が背景に認められる。
結節性硬化型ホジキンリンパ腫
膠原線維による結節性病変形成と凹窩細胞(lacunar細胞)の形態を有するHRS細胞が見られる。
リンパ球豊富型ホジキンリンパ腫
HRS細胞のほかに凹窩細胞やpopcorn細胞を認め、結節性病変を呈する。好中球および好酸球の浸潤はほとんど認めない。
リンパ球減少型ホジキンリンパ腫
びまん性病変を形成、HRS細胞の絶対数が多く、背景のリンパ球が少ない。
画像・生検による病期評価
画像
- PET-CT検査
- 超音波検査
- MRIそのほかは症状にあわせて検討
生検
- 臨床病期IIA-IVにおいては骨髄生検
- 経皮的もしくは腹腔鏡下で肝生検
- CTガイド下で骨生検
- 経皮的もしくは開胸肺生検
- 選択的生検もしくは節外組織生検
- 治療の変更が予想される場合には開腹生検も辞さない
ホジキンリンパ腫の病期分類 (Ann Arbor 病期分類、Cotswold修正分類)
- Ⅰ期
- 病変が1か所のみのリンパ節領域(Ⅰ期)、または1個のリンパ節外臓器の限局性病変(ⅠE期)のみの場合(脾臓・胸線・ワルダイエル輪)
- Ⅱ期
- 病変は横隔膜を境界にして一方の側に限局していて、なおかつ、病変が2か所以上のリンパ節領域に存在する場合(Ⅱ期)、または病変リンパ節とそれに関連したひとつのリンパ節外臓器(または部位)への限局性の浸潤がある場合(横隔膜の同側の他のリンパ節外領域の有無は問わない)(ⅡE期)
- Ⅲ期
- 病変が横隔膜を境界にして両側のリンパ節領域に進展している場合(Ⅲ期)。病変リンパ節領域に関連するリンパ節外臓器(または部位)への限局性浸潤を伴っている場合はⅢE期とする。脾臓浸潤がある場合はⅢSと記載し、両者を認める場合はⅢE+Sと記載する。
- Ⅳ期
- 病変がリンパ節外臓器へびまん性(多発性)に浸潤している場合(領域リンパ節の浸潤の有無は問わない)。または、リンパ節病変と、それに関連しない遠隔のリンパ節外臓器に病変がある場合。リンパ節以外の病変の扱いについては、病変がリンパ節外臓器のみに限局している場合やリンパ節病変に近接したリンパ節臓器に限局性に浸潤している場合には、それはリンパ節病変と同様に扱い、『E』という記号を付記する。肝臓などリンパ節外臓器にびまん性に浸潤進展した状態はⅣ期として扱う。リンパ節外の臓器浸潤が病理学的に証明された場合には、浸潤部位の記号に続けて(+)と記載する。浸潤部位は下記の表記に従う。
- 診断前6ヵ月以内の10%以上の体重減少
- 38℃以上で3日以上持続する原因不明の発熱
- 盗汗
鑑別診断
混合細胞型ホジキンリンパ腫
サルコイドーシス、EBウイルス陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
結節性硬化型ホジキンリンパ腫
分化大細胞型リンパ腫との鑑別、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(特に原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)
リンパ球減少型ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫
参考文献
- 押味和夫、木崎昌弘、田丸淳一 WHO分類第4版による白血病・リンパ系腫瘍の病態学 Hodgkinリンパ腫、中外医学社、2009:379-393
- Report of a committee convened to discuss the evaluation and staging of patients with Hodgkin's disease: Cotswolds meeting.JCO vol7, No11 (Nov), 1989:1630-1636
当該事業における対象基準
組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会