1. 悪性新生物
  2. 大分類: リンパ腫
22

ホジキン(Hodgkin)リンパ腫

ほじきんりんぱしゅ

Hodgkin lymphoma; HL

告示

番号:89

疾病名:ホジキンリンパ腫

疾患概念

ホジキンリンパ腫(HL)は、若年成人世代に多いリンパ性悪性腫瘍の一種で、リンパ節やリンパ節以外の縦隔や消化管などの組織から発生する。腫瘍本体は病理組織学的に特徴的な形態を有するHodgkin and Reed-Sternberg (HRS)細胞であり、これはB細胞起源のクローナルナな増殖である。しかしHRS細胞は腫瘍組織全体の0.1-5%であり、これから産生されるサイトカインやケモカインによる反応性炎症細胞が主として腫瘤を形成する。病理組織学的に古典的ホジキンリンパ腫 (cHL)と結節性リンパ球優位型 (NLPHL)に分けられ、cHLの本体がHRS細胞であるのに対して、NLPHLの本体は核が分葉していることからポップコーン細胞と呼ばれる細胞である。HLの治療反応性は一般的に良好であり以前から長期生存者が多く、このことから放射線や抗がん剤などの治療による晩期合併症が問題となってきた。

疫学

リンパ腫はHLと非ホジキンリンパ腫 (NHL)に大別され、小児リンパ腫の本邦における発症頻度は年間150~180例前後であるが、HLは全リンパ腫の5-10%程度で欧米と比べて低頻度である。好発年齢は15-35歳と50歳以上の2峰性である。NLPHLはcHLに比しずっと少なくHLの5%程度である。

病因

混合細胞型(cHLに属する一亜型)ではEBウイルスがしばしば陽性となり、HLの発症にEBウイルス感染の関与が指摘されている。特に若年発症例ではEBウイルスに対する抗体価が上昇していることが多いことから、小児HLの発症には免疫の未熟性やウイルス感染を契機とする免疫調節異常の関与が報告されているが、明らかな病因は不明である。

臨床症状

無痛性で弾性硬の、頚部あるいは鎖骨上窩の腫瘤がもっとも多く、頚部から縦隔にかけて連続的に進展することが特徴的である。縦隔病変を伴った場合は、診断時に腫瘍塊による気管圧迫、脊髄圧迫、腸重積症などの緊急対応が必要な場合がある。NLPHLでは縦隔浸潤は稀である。全身症状としてはB症状と呼ばれる、発熱、盗汗、体重減少を認めることがある。それ以外にも皮疹を伴わない皮膚掻痒症を認めることもある。これらは反応性炎症細胞が産生するサイトカイン、ケモカインによりもたらされるもので、症状の程度は腫瘍の大きさに比例する。

診断

治療

1970年代から、放射線治療ならびにMOPP (nitrogen mustard, vincristine, procarbazine, prednisone), ABVD (Adriamycin, bleomycin, vinblastine, dacarbazine)などの多剤併用療法が有効であることが示され、高い生存率が得られていた。しかし、治療による二次がん、不妊、心筋障害など重篤な晩期合併症を認めることが多く、これらを減らすことが課題となった。我が国では、日本小児がん研究グループ血液分科会が、18-fluoro-2-deoxyglucose positron emission tomography (FDG-PET)による初期治療反応性により、その後の放射線治療の施行有無を判断する臨床試験を行っている。入院期間は低リスク群で3か月、高リスク群で8か月程度である。歴史的にcHLとNLPHLは同一の治療法が用いられてきたが、NLPHLの方が治療反応性は良好である。再発難治例に対しては化学療法後の自家移植がなされることが一般的であるが、最近ではこれらの例に対するキメラ型CD30抗体(brentuximab vedotin)の高い有用性が確認されている。更にはNF-κB阻害薬、腫瘍免疫を回避する機構として働くPD-1阻害薬などの使用も検討されている。

予後

低リスク群において5年無病生存率は90%以上、全生存率は95%以上、高リスク群においても5年無病生存率は80%以上、全生存率は90% 以上である。

成人期以降の注意点

①再発 ②二次がん ③心機能障害 ④骨粗鬆症・骨壊死 ⑤眼科的異常 ⑥低身長・肥満・耐糖能異常・高血圧 ⑦性腺機能障害 ⑧白質脳症 などが生じ得る。全脳・全脊髄放射線照射によって他に、⑨二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑩内分泌機能障害 などが生じ得る。

※造血幹細胞移植後の成人期以降の注意点
①内分泌機能障害 ②成長障害 ③メタボリック症候群 ④不妊症 ⑤心機能障害 ⑥呼吸機能障害 ⑦消化管障害 ⑧肝障害 ⑨腎障害 ⑩眼科的異常 ⑪歯牙異常 ⑫聴力障害 ⑬骨粗鬆症・骨壊死 ⑭慢性移植片対宿主病 ⑮免疫不全 ⑯二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑰二次がん などが生じ得る。

参考文献

  1. Cole PD, Parikh RR, Kelly KM: Hodgkin Lymphoma. Blaney SM, Adamson PC, Helman LJ. Pizzo and Poplack’s Pediatric Oncology, 8th Edition, Wolters Kluwer, 2020: 538-553.
  2. 古賀友紀、熊谷昌明、瀧本哲也、他:本邦における小児Hodgkinリンパ腫157例の後方視的検討,臨床血液53 (4):443-449, 2012.
  3. 古賀友紀、他:小児ホジキンリンパ腫の標準的治療は何か 小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン 2016年度版 2016:96-98
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会