診断の手引き

  1. 皮膚疾患群
  2. 大分類: 外胚葉形成不全
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無汗性外胚葉形成不全

むかんせいがいはいようけいせいふぜんしょう

anhidrotic ectodermal dysplsia

告示

番号:12

疾病名:無汗性外胚葉形成不全

状態の程度

全身の75%以上が無汗(低汗)である場合

診断基準

A 症状

Definite, Probableを対象とする。

A 出生時から無(低)汗である*。
 *ヨードデンプン反応を用いたミノール法などによる温熱発汗試験で黒色に変色しない領域もしくはサーモグラフィーによる高体温領域を確認する。
B 歯芽形成異常(欠損または低形成)、毛髪形成異常を伴う。
C 無汗(低汗)部皮膚における汗腺の欠如または低形成が証明される。

Definite: A+B+C
Probable: A+C

参考所見:特異な顔貌(前額突出、下口唇外反、耳介変形、色素沈着、低い鼻梁、鼻翼形成不全を伴う小鼻症)を伴うこともある。


B 検査所見

1.病理組織学的には、表皮および真皮に著変はないが汗腺や脂腺を認めない所見がみられる。
2.温熱発汗試験:
 人工気象室や、簡易サウナ、電気毛布などを用いて加温により患者の体温を上昇させ発汗を促し、無汗部位を観察する.ミノール法、ラップフィルム法、アリザリン法などを用いると無汗部をより明瞭に評価できる。正常人では15分程度の加温により全身に発汗を認める。一方、無汗(低汗)性外胚葉形成不全症では、広範に無汗を認める。
3.サーモグラフィー:
 温熱発汗試験と併せて、サーモグラフィーを施行すると、発汗のない部位に一致して体温の上昇が認められる。


C 遺伝学的検査等

[X連鎖劣性遺伝性低汗性外胚葉形成不全症]
X連鎖劣性遺伝性の本症の責任遺伝子は、Xq12-q13.1に局在するectodysplasin A(EDA)である。現在までに、本症の原因として200種類以上のEDA遺伝子変異が報告されている。

[常染色体優性・劣性遺伝性低汗性外胚葉形成不全症]
常染色体遺伝性の本症は、2q13に局在するEDA receptor (EDAR;別名DL)遺伝子または1q42.3に局在するEDAR-associated death domain(EDARADD)遺伝子の変異によって発症する。現在までに、本症の原因として5種類のEDARADD遺伝子変異が同定されている。EDA-A1、EDARおよびEDARADDは、外胚葉の形成に重要なシグナル伝達系(EDARシグナル)の主要構成分子であり、いずれの遺伝子に変異が生じても同様の臨床像を呈するとみられる。


D 鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。
① 先天性無痛無汗症
② Fabry病
③ 特発性後天性全身性無汗症


E-1 確実例

確実: A+B+C


E-2 疑い例

疑い: A+C

参考文献

  • 1. Weech AA:Hereditary ectodermal dysplasia of the anhidrotic type. A report of two cases, Amer J Dis Child, 37:766-890, 1929
  • 2. 馬場直子:乾燥皮膚で見つかった減汗性外胚葉異形成症,皮膚病診療,36:729-732, 2014
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児皮膚科学会