1. 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
  2. 大分類: 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
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ヤング・シンプソン(Young-Simpson)症候群

やんぐ・しんぷそんしょうこうぐん

Young-Simpson syndrome

告示

番号:30

疾病名:ヤング・シンプソン(Young-Simpson)症候群

概念・定義

ヤング・シンプソン症候群は、1)特徴的な顔貌、2)精神発達の遅れ:中等度から重度、3)眼症状:眼瞼裂狭小を必須として付随する弱視・鼻涙管閉塞など、4)骨格異常:内反足など、5)内分泌学的異常:甲状腺機能低下症、6)外性器異常、などを特徴とする先天異常症候群でヒストンアセチル化酵素KAT6Bの異常を原因とするとされている。現在まで30例近くの報告が確認されている。羊水過多、新生児期の哺乳不良など、早期から生涯にわたっての医療管理を必要とする。国内でも、遺伝学的検査が可能となり、変異陽性例が報告されている。

病因

2011年にヒストンアセチル化酵素KAT6Bの異常が原因であることが判明した(Clayton-Smith, 2011; Simpson, 2012; Campeau, 2012)。現在まで30例近くの報告が確認されている。しかし、多臓器にわたる病態のメカニズムは、ほとんど解明されておらず、今後の課題でもある。

臨床症状

診断基準は、以下の主要6症状からなる。1)特徴的な顔貌、2)精神発達の遅れ:中等度から重度、3)眼症状:眼瞼裂狭小を必須として付随する弱視・鼻涙管閉塞など、4)骨格異常:内反足など、5)内分泌学的異常:甲状腺機能低下症、6)外性器異常:主に男性で停留精巣および矮小陰茎。補助項目として、羊水過多、新生児期の哺乳不良、難聴、行動特性、泌尿器系異常、遺伝子診断によりKAT6B遺伝子に疾患特異的変異を検出することがあげられる。
主な合併症として、約7割で羊水過多を認める。新生児期の特徴は、出生後の軽度呼吸障害があり、哺乳障害はほぼ必発である。哺乳力が弱く、鼻からよくミルクが出てくるなどといった症状に加えて、体幹の反り返りが強くて直接授乳(母乳)が困難なことが多い。筋緊張の低下や後弓反張も認める。眼瞼裂は狭小でほとんど目は開けない。哺乳不良を多く認めるが、経管栄養が行われた場合には体重増加不良は目立たなくなる。身長は正常かやや低い傾向にある。
感覚器としては、強度の弱視、難聴は多く、医療管理が必要な程度のものが多く、成人期のQOLに影響しうる合併症である。機能的な問題点としててんかんの合併がある。精神発達の遅れは中等度から重度で、表出言語は極めて乏しく、理解言語と表出言語の差が大きい。

治療

対症療法が中心となっている。内反足では固定の他に手術治療を選択することも少なくない。先天性心疾患についても同様である。眼科的評価は不可欠で、鼻涙管閉塞に対した処置や屈折異常に対しての眼鏡処方なども必要である。早期の療育参加やリハビリテーションは重要である。甲状腺機能低下症に対しては甲状腺ホルモン投与などが必要。聴覚評価に基づき、補聴器も検討する。生涯にわたる医療管理はよりよい生活のために必要とされている。

予後

先天性心疾患やてんかん、新生児・乳児期の気道感染などの合併症管理による。また、感覚器合併症(眼科的合併症・難聴)も根治は不可能である。精神発達の遅れについては、療育・リハビリテーション等の早期からの介入が予後に影響を与える。
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児遺伝学会