概念、定義
本症は、1969年Hadornらにより最初に報告された。エンテロキナーゼは十二指腸、空腸粘膜に存在し、トリプシノゲンを活性化してトリプシンにする働きがある。本症においては、エンテロキナーゼが先天的に欠損することにより、蛋白質分解活性の完全な欠損を来す。
疫学
発生頻度は不明であり、極少数の報告が存在する。同胞内発生があり遺伝形式は常染色体劣性遺伝と推測されている。2002年、本症家系においてHolzingerらによりPRSS7遺伝子変異が証明された。
病因
先天的なエンテロキナーゼのみの選択的な欠損であり、トリプシノゲンからトリプシンへの活性化がおこらないため、トリプシノゲン欠損症と同様に摂取蛋白の分解および吸収が障害される。十二指腸液におけるトリプシン作用が失われるが、リパーゼ、アミラーゼは正常である。
症状
蛋白の分解および吸収が障害されることにより、生後まもなくより、重度の下痢を認め、重篤な低蛋白血症となり、浮腫、貧血、成長障害を来す。
検査所見、診断
小腸粘膜生検と十二指腸液の採取を施行し、酵素活性を測定する。本症の十二指腸液は、リパーゼ、アミラーゼ活性は正常であるが、エンテロキナーゼ、トリプシン、キモトリプシンの活性が認められない。しかし、in vitroでエンテロキナーゼを添加するとトリプシン活性が得られる。
治療、予後
蛋白分解酵素の投与、またエンテロキナーゼが含まれている消化酵素配合薬が効果的である。治療に対する反応性はよく、予後は良好である。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児栄養消化器肝臓学会