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ビタミンB6依存性てんかん

びたみんびーろくいぞんせいてんかん

Vitamine B6-dependent epilepsy

告示

番号:94

疾病名:ビタミンB6依存性てんかん

疾患概念

ビタミンB6依存性てんかんは、ビタミンB6(ピリドキシンまたはピリドキサールリン酸)の投与によりてんかん発作が消失または著明に改善し、その後も発作抑制のためにビタミンB6治療の継続が必要なてんかんの総称である。ピリドキシン依存性てんかん(ALDH7A1 欠損症)、ピリドキサール依存症(PNPO 欠損症)、PLPHP欠損症(PLPBP 欠損症)に分類される。発症時期は主に乳児期から幼児期早期で、焦点発作、強直間代発作、ミオクロニー発作、てんかん性スパズムなど多彩なてんかん発作を認め抗てんかん薬治療に抵抗性である。様々な程度の知的発達症、自閉スペクトラムなどの神経発達症を伴う。

疫学

詳細な疫学情報はないが、まれであり小児患者数は国内で約200人と推測される。

病因

ALDH7A1PNPOPLPBPPROSC )の遺伝子の変異が報告されている。

臨床症状

発症時期は新生児期から幼児期早期で、特に乳児期までの発症が多く、2歳以上の発症は稀である。てんかん発作は焦点発作、強直間代発作、ミオクロニー発作、てんかん性スパズムなど多彩である。

診断

主に新生児期から乳児期に発症し、ビタミンB6製剤(ピリドキシンまたはピリドキサールリン酸)の投与で、発作の顕著な減少または消失を認めるのが特徴である。臨床症状から本症を疑った場合、代謝マーカー検査、遺伝子検査を行う。現在、ALDH7A1PNPOPLPBPPROSC )遺伝子の変異による例が報告されている。代謝マーカーの異常や遺伝子の変異を認めた場合に診断する。

診断の際の留意点/鑑別診断

ビタミンB6製剤以外のてんかん治療が一時的・部分的に効果があることもあり注意が必要である。脳波はサプレッションバースト、全般性徐波、焦点性異常などを認めるが、異常を認めない場合でも本症を否定できない。また、頭部MRIは特記すべき所見を認めない場合も、脳萎縮、白質信号異常、髄鞘化遅延などを認める場合もある。これらのことから、臨床所見のみでの診断は困難で、ビタミンB6依存性てんかんを呈する疾患の代謝マーカー検査・遺伝子解析を必要とする。

高プロリン血症2型、低ホスファターゼ症、先天性GPI欠損症も、症状の一部としてビタミンB6依存性てんかんを呈するため、鑑別が必要である。

合併症

様々な程度の知的発達症、自閉スペクトラム症などの神経発達症を伴う。

治療

ビタミンB6の投与を行う。各種抗てんかん薬は無効なことが多い。

予後

ビタミンB6治療が有効であるが、治療中断によりてんかん発作が再発することがあり、継続的な治療を要する。

研究班

平成26~28年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「希少難治性てんかんのレジストリ構築による総合的研究」
平成29~31年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「稀少てんかんに関する調査研究」
令和2~4年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「稀少てんかんに関する包括的研究」

成人期以降の注意点

ビタミンB6治療の中断によりてんかん発作が再発することがあり注意を要する。神経発達症を伴う場合は成人期に認める障害に応じた治療・ケアを行う。

参考文献

  1. Gospe SM Jr. Pyridoxine-Dependent Epilepsy – ALDH7A1. GeneReviews® [Internet]. Adam MP, et al. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2021
  2. Epileptic Syndromes In Infancy, Childhood and Adolescence (6th ed).Bureau M,et al.THOMAS&P.WOLF (2019) John Libbey Eurotext Ltd.
  3. 日本臨床 別冊神経症候群VI てんかん症候群 Page212-216
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児神経学会