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先天性赤血球形成異常性貧血

せんてんせいせっけっきゅうけいせいいじょうせいひんけつ

congenital dyserythropoietic anaemia; CDA

告示

番号:43

疾病名:先天性赤血球形成異常性貧血

疾患概念

先天的に赤血球系細胞に形成異常があり、慢性の不応性貧血、無効造血および続発性ヘモクロマトーシスを伴う疾患群である。Ⅰ型からⅣ型の4型に分けられるが、いずれの病型にもあてはまらない亜型も存在する。

疫学

西欧からの報告によると、Ⅰ型、Ⅱ型ともに10万出生あたり1人の頻度である。Ⅲ型、Ⅳ型はより少ない。国内では臨床診断としてⅠ型からⅢ型までの報告があるが、遺伝子異常まで確認されているのはⅠ型のみである。

病因

赤血球系の障害は赤芽球系前駆細胞レベルから生じる。顆粒球系、リンパ球系および血小板系に異常はみられない。

臨床症状

貧血は小児期から存在していることが多く、10-20%は生後1か月以内から貧血を認める。貧血の程度は軽症から重症まで様々であるが、約30%の症例では輸血を必要とせずに経過し、小児期に輸血依存であった場合でも徐々に貧血の改善がみられることがある。特に思春期以降は重症感染症や妊娠、大手術などの機会を除き輸血が必要になることは少ない。貧血以外には黄疸、胆石、脾腫などを呈する。

治療

  1. 輸血療法多くの症例は生涯にわたり貧血を呈するが、貧血自体は軽症から中等症であることが多く、輸血が必要となることは少ない。1回でも輸血が必要となった例はⅠ型の50%、Ⅱ型の10~60%で、その後も輸血依存となるのはその一部のみである。
  2. 除鉄輸血依存でなくても鉄過剰となりうるため血清フェリチン値の定期的なモニタリングが必要である。除鉄を開始するフェリチン値のカットオフとして1000~1500μg/lが推奨されている。輸血依存があれば積極的に除鉄を考慮する。
  3. 摘脾CDAは赤血球寿命が短縮していることから、Ⅱ型など一部の症例で有効であるといわれている。摘脾によってHb値は上昇し、血清ビリルビン値は減少するが、鉄過剰を防ぐことはできない。Ⅱ型以外でも有効例は報告されているが、効果を予測する因子は見つかっていない。摘脾によって血小板数が増加し、Budd-Chiari症候群や門脈血栓症を来した報告があり、注意を要する。
  4. インターフェロンⅠ型でインターフェロンαの投与が有効であったとの報告があり、輸血依存の場合には考慮すべき治療法である。ただし、副作用、保険適応について留意する必要がある。Ⅱ型には無効である。
  5. そのほかの薬物療法赤芽球過形成に対してビタミンB12や葉酸の補充が行われる。また、ビタミンEが有効であったという報告もある。
  6. 造血幹細胞移植 (HSCT)輸血依存性のⅠ型、βサラセミアを合併した Ⅱ型などで報告がある。多賀らの調査でも亜型の1例でHSCTが行われ輸血不要となっていた。ヘモクロマトーシスを合併していても十分な除鉄を先行させて非血縁ドナーからのHSCTを行った例の報告もあり、適当なドナーがいる輸血依存例には考慮すべきであろう。欧州骨髄移植学会が報告したHSCTを行ったCDA 39例の解析では、36ヶ月時の無イベント生存率(イベントは拒絶、生着不全、2回目のHSCT)は45%、全生存率は71%であった。10例が死亡し、死因はGVHDが9例、感染症が3例、多臓器不全が1例であった。鉄過剰合併例と非血縁ドナーからの移植例の全生存率が有意に不良で、除鉄とドナー選択の重要性が改めて示された。移植前処置として38例でブスルファンまたはトレオスルファンによる骨髄破壊的前処置が用いられたが、非破壊的前処置にて良好な経過を辿った症例も報告されており、今後の検討課題である。

予後

長期予後に関して、ドイツのCDA Registryからの報告がある。19家系21例(診断時年齢0.1-45歳、中央値17歳)を最長37年間追跡したもので、12例が輸血をされ、うち5例は4歳までに複数回の輸血を施行されたが、4歳以後は輸血不要となっていた。全例でヘモクロマトーシスを認め、9例が除鉄療法を受けた。5例が死亡しており(死亡時年齢31-57歳)、死因は心疾患と肝疾患の合併が3例、耳の扁平上皮癌が1例、摘脾後敗血症が1例であった。

成人期以降の注意点

CDAは診断が難しいため、成人期以降に診断される場合がある。長期的には続発性ヘモクロマトーシスをきたす。輸血依存でなくても鉄過剰となりうるため血清フェリチン値の定期的なモニタリングが必要である。
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:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会