概要・定義
α1アンチトリプシンは、肝臓で合成される糖タンパクで、血液中のα1グロブリン分画の80から90%を占める。肝臓で合成されたα1アンチトリプシンは、血流を介して濃度依存的に肺内拡散し、好中球エラスターゼ阻害剤として肺胞壁の障害を防ぐ作用がある。α1アンチトリプシンが生体内で欠損すると、小児では、胆汁うっ滞性肝障害、成人では早期発症型肺気腫の原因となる。常染色体劣性遺伝病である。
疫学
日本での報告は、20例程度という極めてまれな疾患である。欧米白人では、2000から5000人にひとりである。
病因
α1アンチトリプシンは、肝臓で合成される糖タンパクで、血液中のα1グロブリン分画の80から90%を占める。肝臓で合成されたα1アンチトリプシンは、血流を介して濃度依存的に肺内拡散し、好中球エラスターゼ阻害剤として肺胞壁の障害を防ぐ作用がある。α1アンチトリプシン欠損症では、好中球エラスターゼの作用を軽減できないことから、肺胞壁が障害され、早期発症型肺気腫が引き起こされる。
症状
α1アンチトリプシンが生体内で欠損すると、小児では、胆汁うっ滞性肝障害、成人では早期発症型肺気腫の原因となる。
診断
『診断の手引き』参照
治療
肺気腫に対する通常の治療のほか、α1アンチトリプシンの静脈内投与を行う。肝障害については、肝臓移植が適応となる。
予後
小児期に肝障害が重篤でなければ、生命予後は良好である。
成人期以降
肺障害の予防のため、喫煙はさける。
参考文献
成高中之ら、α1アンチトリプシン欠損症 遠藤文夫(編)先天代謝異常ハンドブック第1版、中山書店 2013 346-347
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年5月25日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会