概要・定義
コラーゲンの産生あるいは成熟における先天的障害により結合組織の脆弱性を生じる一連の遺伝性疾患群である。6種の病型分類される。
- 古典型: V型プロコラーゲンの異常、常染色体優性遺伝、原因遺伝子は、COL5A1 COL5A 関節の過伸展、創傷治癒遅延、関節可動性亢進を呈する。
- 関節型:常染色体優性遺伝を示すが、原因遺伝子は不明である。柔らかい皮膚、関節可動性亢進を認める。
- 血管型: Ⅲ型プロコラーゲンの異常、常染色体優性遺伝、原因遺伝子は、COL3A1 薄い透過性の皮膚、動脈・腸管・子宮破裂、易出血性を認める。
- 後側彎型: リジンハイドロオキシラーゼの先天的欠損が原因の常染色体劣性遺伝病である。出生時の筋緊張低下、全身性弛緩性関節、先天性進行性脊椎後側彎、眼球破裂などを認める。
- 多発関節弛緩型:I型プロコラーゲンのN-プロテイナーゼ切断部位の異常。常染色体優性遺伝、原因遺伝子は、COL1A1 COL1A2 反復性亜脱臼を伴い全身性の関節可動性亢進、両側先天性股関節脱臼を認める。
- 皮膚弛緩型:プロコラーゲンN-プロテイナーゼの欠損が原因、常染色体劣性遺伝。原因遺伝子は、ADAMTS2 皮膚の脆弱性、たるんだ皮膚を認める。
疫学
エーラスダンロス症候群(EDS)全体で出生5000人にひとりとされる。
病因
コラーゲンの構造遺伝子あるいはプロコラーゲンからの成熟に関与する遺伝子の異常が原因でコラーゲンの異常が引き起こされる。
症状
皮膚症状として過伸展性や脆弱性、関節症状として過可動性や弛緩性を認める。その他の症状は、疾患概要および定義の項を参照されたい。
診断
臨床所見から、6病型(古典型、関節型、血管型、後側彎型、多発関節弛緩型、皮膚弛緩型)のどれに当てはまるかを検索し、他の疾患を鑑別・除外して、診断に至る。遺伝子診断は、血管型EDSについては、COL3A1 遺伝子については、研究室レベルで行われており、その診断的意義は高いが、その他の原因遺伝子の解析は一般的ではない。
治療
対症療法に限られる。
予後
血管型を除けば生命予後は比較的良好であるが、高度の関節障がいなど機能予後は不良のことも多い。
成人期以降
妊娠分娩時の合併症も多く、妊娠管理も重要である。
参考文献
森崎裕子ほか。エーラスダンロス症候群 内科2012, 109, 1049-1051
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年5月25日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会