概要・定義
フコシドーシスはライソゾーム酵素であるα-L-フコシダーゼ(EC3.2.1.51)の遺伝的欠損により、フコースを含む各種の糖蛋白質、糖脂質が全身の細胞のライソゾーム内に蓄積し、進行性の精神運動発達遅滞をきたす常染色体劣性遺伝疾患である。ライソゾーム病の中でも特に頻度が低く、患者は全世界に分布しているが百数十例の報告にすぎない。臨床的に2種類の型に分けられることが多い。乳幼児期に精神運動発達遅滞で発症し進行が早く、汗のNaCl濃度の上昇を特徴とする重症型であるI型と、1−2歳で発症し進行が遅く被角血管腫(angiokeratoma corporis diffusum)を特徴とする軽症のII型である。
症状
臨床的に精神運動発達遅滞、神経学的退行、粗な顔貌、低身長、易感染性などを高率に認められ、約半数で脊柱後側彎、多発性骨形成不全、被角血管腫、関節拘縮、けいれんと肝脾腫が認められる。また難聴、ヘルニア、視力障害なども認めることがある。
診断
MRIでのT2強調画像で淡蒼球が低信号、リンパ球の空胞形成、尿中に多量のフコースを含む糖蛋白質、オリゴ糖が排泄されているが尿中ムコ多糖の排泄増加のない、ことなどが検査で重要である。確定診断は末梢血白血球、培養皮膚線維芽細胞のα-L-フコシダーゼ活性の著明な低下を証明する。もしくはα-L-フコシダーゼの遺伝子検査がある。
治療
神経症状に対する支持療法などが主たる治療法である。造血幹細胞移植の報告がある。
成人期以降
特に軽症型は進行も緩徐であり、成人期に至ることも多いと考えられる。側弯症に対する治療、易感染性に対する対応などが重要であり、進行したあとは経管栄養、気管切開、人工呼吸器の適応について検討を要する。被角血管腫からの出血、鼻ポリープの対応を要することがある。
参考文献
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年5月25日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会