疾患概念
ガラクトースの代謝経路において α-D-ガラクトースと β-D-ガラクトースの相互変換を促進するガラクトースムタロターゼ(GALM)の活性低下を原因とする常染色体潜性(劣性)遺伝性疾患である1。
疫学
公的ゲノムデータベースから求めた本症の保因者頻度から,我が国では約8万出生に1例の頻度で罹患者が発生していると推定されている2。
病因
GALM 遺伝子にコードされるガラクトースムタロターゼの活性低下による。
病理・病態
ガラクトキナーゼ欠損症と同様に、蓄積したガラクトースから変換されるガラクチトールが病態の主な原因物質と考えられている。
臨床症状
白内障が報告されている1。
検査所見
血中ガラクトース値は高値となり、血中ガラクトース-1-リン酸値は極めて低値または検出しない。ただし新生児期や乳児期早期では血中ガラクトース-1-リン酸値がある程度上昇することがある。
診断
『診断の手引き』参照
診断の際の留意点/鑑別診断
血中ガラクトース値および血中ガラクトース-1-リン酸値のパターンは、ガラクトキナーゼ欠損症とガラクトースムタロターゼ欠損症は類似した傾向を示すため、両者の鑑別には遺伝学的検査が必要である。また血中ガラクトース上昇を起こしうる以下の疾患を鑑別する。
- ガラクトース血症Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型
- シトリン欠損症や胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞性疾患
- 門脈体循環シャント
- Fanconi-Bickel症候群
治療
白内障の予防のため、乳糖ならびにガラクトースの摂取を制限する。
予後
比較的良好と考えられているが、長期予後は不明である。
成人期以降の注意点
成人期以降も乳糖ならびにガラクトースの摂取制限を継続し、白内障の発症に注意すべきである。
参考文献
- Wada Y, Kikuchi A, Arai-Ichinoi N, et al. Biallelic GALM pathogenic variants cause a novel type of galactosemia. Genet Med 2019;21(6):1286–94.
- Iwasawa S, Kikuchi A, Wada Y, et al. The prevalence of GALM mutations that cause galactosemia: A database of functionally evaluated variants. Mol Genet Metab 2019;126(4):362–7.
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2022年11月1日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会