1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: ミトコンドリア病
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ミトコンドリアDNA枯渇症候群

みとこんどりあでぃえぬえーこかつしょうこうぐん

Mitochondrial DNA depletion syndrome

告示

番号:92

疾病名:ミトコンドリアDNA枯渇症候群

概要・定義

ミトコンドリアDNA(mtDNA)量が何かの原因で減少し、ミトコンドリアのエネルギー代謝が阻害され機能障害の起こる疾患群を総称してmtDNA枯渇症候群:mitochondrial DNA depletion syndrome (MTDPS)と称する。一次的病因は核にコードされる遺伝子の異常であり、その結果として二次的にmtDNA量の枯渇を中心に、時に多重欠失や点変異の様な異常をも来たす疾患群で、核DNAとmtDNAのゲノム間コミュニケーションの障害(defects in intergenomic communication)と言う概念でとらえることができる。

疫学

ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症(MRCD)全体の頻度が出生5,000人に1人1)であり、その中でMTDPSの占める割合は、複合型呼吸鎖異常症(MRCD中の)中の18-50%、呼吸鎖複合体I異常症中の7%との報告2)がある。

病因

原因は大きく先天性と後天性に分けられる。後天性としてはHIV治療薬であるzidovudine (AZT) や抗ウィルス薬として用いられる各種核酸類似体で生ずることが知られているが、本稿では先天性の原因について論じる。表に現在OMIMに載っているMTDPSの病型を示す。大きく(脳)筋型と脳肝型に分けられる。mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy (MNGIE) や、心筋症を発症するSengers症候群やMTDPS12は特殊型として分類するものもあるが、ここでは(脳)筋型の1型として表記した。合計15病型になる。しかし、日本でも欧米でも診断されたMTDPSの半数近くの病因はなお不明3-5)であり、まだまだこの分類は完全なものではない。遺伝形式はすべて常染色体劣性である。

表. mtDNA枯渇症候群(MTDPS)の分類

表. mtDNA枯渇症候群(MTDPS)の分類

症状

表を参照されたい。詳細は別の教科書6,7)を参照されたい。

診断

治療

ミトコンドリアカクテル等で治療に当たる。まだモデル動物がちらほらと出現してきた段階で、脳肝型MTDPSにおける臓器移植についても評価が一定しない。今後の検討と進歩が待たれる。

成人期以降

MNGIEなど特殊型を除いて成人期に達することはない重篤な疾患群である。

参考文献

1) Skladal D, et al. Minimum birth prevalence of mitochondrial respiratory chain disorders in children. Brain 2003; 126: 1905-1912
2) 大竹 明.ミトコンドリア病,高乳酸血症.日本先天代謝異常学会編 引いて調べる先天代謝異常症,診断と治療社, 2014; 38-43
3) Sarzi E, et al. Mitochondrial DNA depletion is a prevalent cause of multiple respiratory chain deficiency in childhood. J Pediatr2007; 150: 531-534, 534.e1-6
4) Spinazzola A, et al. Clinical and molecular features of mitochondrial DNA depletion syndromes. J Inherit Metab Dis 2009; 32: 143-158
5) 藤浪綾子他.ミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症における肝疾患の現状.日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌2011; 25: 69-74
6) 梶 俊策.ミトコンドリアDNA枯渇症候群.in 別冊日本臨床 新領域別症候群シリーズ No.20 先天代謝異常症候群(第2版)下-病因・病態研究、診断・治療の進歩- 日本臨床社 大阪 2012; 670-676
7) 大竹 明.mtDNA枯渇症候群(MTDPS).Clinical Neuroscience 2012; 1038-1042
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会