1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: 有機酸代謝異常症
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グルタル酸血症2型

ぐるたるさんけっしょうにがた

Glutaric acidaemia type 2; Glutaric aciduria type 2, multiple acyl-CoA dehydrogenase deficiency

告示

番号:98

疾病名:グルタル酸血症2型

概要・定義

ルタル酸尿症2型はミトコンドリア内の電子伝達フラビン蛋白(electron transfer flavoprotein: ETF)もしくはETF脱水素酵素(ETF dehydrogenase: ETFDH)の先天的欠損により生じる疾患であり、グルタル酸尿症2型、マルチプルアシルCoA脱水素酵素欠損症などとも呼ばれる。臨床像は幅広く、新生児期に重篤な代謝性アシドーシス等で発症し致死的な最重症例から、乳幼児期に代謝性アシドーシスや低血糖、筋力低下として発症する症例、成人期に筋痛、筋力低下を契機に診断される症例も報告されている。タンデムマスによる新生児マススクリーニングでは二次対象疾患として分類されている。遺伝形式は常染色体劣性である。

疫学

わが国における新生児マススクリーニングのパイロット研究の結果によると発見頻度は約31万人に1人でとされている。

病因

ETFおよびETFDHはミトコンドリア内におけるβ酸化経路を含む複数の脱水素酵素反応によって生じる電子を電子伝達系に供給するが、本症ではこれらの先天的欠損が原因となる。原因遺伝子にはETFA, ETFBおよびETFDHがある。遺伝子型と表現型の明らかな対応はないが、ETFDH変異例には乳幼児期以降に発症する例が多い傾向はある。

症状

新生児発症型は、生後早期からの重篤な心筋症、心不全、非ケトン性低血糖を有する症例が多い。きわめて予後不良であり、通常は致死的である。出生時からPotter様顔貌や多嚢胞性嚢胞腎などの奇形を伴う場合もある。乳幼児・学童期発症型はA)主に乳幼児期に低血糖やReye様症候群として発症する場合、B) 主に学童期以降に横紋筋融解症やミオパチーなどの骨格筋症状として発症する場合がある。成人発症型は青年期以降に筋力低下や筋痛として発症し、小児期には原則として症状を認めない。

診断

治療

急性期:対症的な治療に加え、十分量のブドウ糖を供給し、早期に異化亢進の改善を図る。 維持期:特に乳幼児期における飢餓予防が重要であり、食事間隔等の生活指導を行う。その他、低タンパク・低脂肪、高炭水化物食が行われることもある。  薬物療法として、リボフラビン(フラビタン®)大量療法が行われることがある。軽症例の一部ではリボフラビンの大量療法(100-300 mg/日)が有効である。レボカルニチン(エルカルチン®)投与の是非については結論が得られていない。

予後

 新生児発症型については致死的である。乳幼児発症例についても重篤な低血糖発作として発症する場合は初回発作で死亡する場合も少なくない。筋症状は治療による改善が乏しい場合も少なくない。

成人期以降

本症では乳幼児・学童発症型、成人発症型についての患者数が少なく、予後や自然歴についても不明な点が多い。  

参考文献

:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会