1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: アミノ酸代謝異常症
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非ケトーシス型高グリシン血症

ひけとーしすがたこうぐりしんけっしょう

Nonketotic hyperglycinaemia

告示

番号:16

疾病名:非ケトーシス型高グリシン血症

概要・定義

中枢神経系、肝臓、腎臓のミトコンドリアに分布するグリシン開裂酵素系の遺伝的な欠損のために、血漿や髄液などの体液中に大量のグリシンが蓄積する先天性アミノ酸代謝異常症のひとつである。グリシンは中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシンが蓄積することで重篤な神経障害をきたす。

疫学

我が国における頻度は、50~100万出生に1人と推定される。

病因

欠損酵素である、グリシン開裂酵素系は、4つの構成酵素(P-、T-、H-、L-蛋白質と呼ばれている)からなる複合酵素である。P-、T-、H-、L-蛋白質は、それぞれGLDC, AMT, GCSH, DLD遺伝子にコードされている(表参照)。最も遺伝子変異は、60%がGLDC遺伝子、40%がAMT遺伝子に見出され、GCSH遺伝子変異は極めて稀である。DLD遺伝子は、ピルビン酸脱水素酵素複合体やα-ケト酸脱水素酵素複合体と共通であり、この欠損症はLiegh脳症を呈することが報告されている。

症状

新生児型は生後数日以内に筋緊張低下、無呼吸、しゃっくり、昏睡などで発症し、大部分の症例でけいれん重積を伴う。脳梁欠損、脳回異常、水頭症などの脳形成異常も高率に合併し、重度の精神運動発達遅滞を呈することが多い。遅発型は新生児期をほぼ無症状に過ごす。乳幼児期以降から発達の遅れや筋緊張低下が現れる。成人で診断された例もある。

診断

治療

有効な治療法は未だ確立していない。新生児型の発症時には、呼吸管理などで新生児期を乗り切ることが第一の目標となる。薬物治療法としては、1)安息香酸ナトリウム、2)NMDA型グルタミン酸受容体の過興奮を抑制する目的で、デキストロメトルファンやケタミンの投与、が行われている。

予後

新生児期を乗り切った新生児型症例および乳児型症例は、様々の程度の精神運動発達遅滞を伴う。

成人期以降

原疾患の症状が重篤なため、成人期の合併症等を考える十分なデータがない。

参考文献

1)呉 繁夫「非ケトーシス型高グリシン血症」小児疾患診療のための病態生理.小児内科、41巻、355-358頁. 2009年 2)呉 繁夫「非ケトーシス型高グリシン血症」先天代謝異常ハンドブック(総編集:遠藤文夫)、中山書店、46-47頁、2013年
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会