概要・定義
ホモシスチン尿症はメチオニンの代謝産物であるホモシステインが血中に蓄積する常染色体劣性遺伝性疾患である。ホモシステインの重合体であるホモシスチンが尿中に検出される。狭義のホモシスチン尿症はシスタチオニンβ合成酵素(CBS)欠損症を指す。これは新生児マススクリーニングの対象疾患となっている。
疫学
本邦での患者発見頻度は約1/80万とされる。
病因
CBSはホモシステインとセリンからシスタチオニンを合成する酵素であり、CBSの活性低下によりホモシステインが蓄積する。ホモシステインはチオール基を介し、生体内の種々の蛋白とも結合する。その過程で生成されるスーパーオキサイドにより血管内皮細胞障害などをきたすと考えられている。
症状
1)知的障害・てんかん・精神症状などの中枢神経系の異常
2)骨粗鬆症や高身長・クモ状指・側彎症・鳩胸・凹足・外反膝などの骨格の異常(マルファン症候群様体型)
3)水晶体亜脱臼:無治療の場合8歳ころまでに認められる
4)血栓症(冠動脈血栓症、肺塞栓、脳血栓塞栓症など):無治療の場合10代後半から認められる。生命予後を規定する因子となる。
なお、新生児マススクリーニング発見時には無症状である。
診断
『診断の手引き』参照
治療
1)メチオニン制限:血中メチオニン濃度を1 mg/dL (67 μmol/L) 以下に保つようにする。メチオニンは必須アミノ酸であり、メチオニン除去粉乳〔雪印メチオニン除去粉乳(S26)〕のみの飲用ではメチオニン欠乏症となるため、必ず母乳・一般粉乳と併用する。
1) ピリドキシン大量投与:一部にピリドキシンの大量投与で、食事療法の緩和が可能となる例がある。
3)ベタイン(サイスタダンR):年長児においては食事療法にベタインを併用することが多い。この場合、血中メチオニン値は上昇するためコントロールの基準は血漿総ホモシステイン (20 μmol/L以下 良好、50μmol/L以下 やや良好)とする。
予後
新生児マススクリーニングの導入により、知的予後、生命予後は良好である。
成人期以降
上記の治療は一生涯を通じて行う必要がある。血栓予防のためアスピリン、ジピリダモールの投与がなされることがある。
参考文献
1) Picker JD, et al. Gene Review: Homocystinuria caused by cystathionine beta-synthase deficiency. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1524/
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2015年5月25日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会