1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: アミノ酸代謝異常症
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高チロシン血症3型

こうちろしんけっしょうさんがた

Tyrosinemia type 3

告示

番号:10

疾病名:高チロシン血症3型

概要・定義

チロシンは食事に含まれるアミノ酸の一つとして、またフェニルアラニンの代謝産物として得られる。生体内でフェニルアラニンはフェニルアラニン水酸化酵素によってチロシンへと変換される。チロシンはチロシンアミノ基転移酵素によって4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、続いて4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素によってホモゲンチジン酸、ホモゲンチジン酸酸化酵素によってマレイルアセト酢酸、マレイルアセト酢酸イソメラーゼによってフマル酸とアセト酢酸に分解される。高チロシン血症は、I型、II型、III型の3つの病型に分類されている。これらの疾患は、遺伝的・酵素学的に別の疾患であり、臨床症状出現の機序も異なる。遺伝形式はいずれも常染色体劣性である。高チロシン血症I型はフマリルアセト酢酸ヒドラーゼが欠損によって、高チロシン血症II型は細胞質チロシンアミノ基転移酵素の欠損によって、高チロシン血症III型は4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素の欠損によって発症する。

病因

4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素 (HPD: EC1.13.11.27)が欠損しているため、チロシンのαケト酸である4-ヒドロキシフェニルピルビン酸とチロシンが増加する。尿中への4-ヒドロキシフェニルピルビン酸とその酸化物の排泄も著明に増加している。

症状

I型、II型よりも軽度であり、無症状の症例も存在する。これまでに失調、痙攣、軽度の精神発達遅延などが報告されている。これらはI型、II型には見られない症状であり、体液中における4-ヒドロキシフェニルピルビン酸の増加が関連している可能性がある。このような症状をきっかけに診断される症例が少なくないことから、実際は無症状の例が多く存在することが考えられる。

診断

治療

低フェニルアラニン・低チロシン食、特殊ミルクによる食事療法を行う。

成人期以降

低フェニルアラニン・低チロシン食や特殊ミルクによる治療を生涯続ける必要がある。低フェニルアラニン・低チロシンミルクは特殊ミルクの登録品目に分類されており、20歳以降の患者への供給は不確定である。

参考文献

1. 遺伝性高チロシン血症 中村公俊、遠藤文夫 小児疾患診療のための病態生理2 小児内科41増刊号 (2009) 2.  高チロシン血症(3)遺伝性高チロシン血症III型とホーキンシン尿症 中村公俊 遠藤文夫 先天代謝異常症候群 別冊日本臨床 新領域別症候群19 (第2版) 164-166日本臨床社 (2012)
:バージョン2.0
更新日
:2015年5月25日
文責
:日本先天代謝異常学会