1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 慢性副腎皮質機能低下症
42

38から41までに掲げるもののほか、慢性副腎皮質機能低下症(アジソン(Addison)病を含む。)

そのた、まんせいふくじんひしつきのうていかしょう(あじそんびょうをふくむ。)

Other chronic adrenal insufficiency (incl. Addison disease)

告示

番号:85

疾病名:81から84までに掲げるもののほか、慢性副腎皮質機能低下症(アジソン 病を含む。)

概念

後天的な原因による慢性副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、ミネラルコルチコイドであるアルドステロン、グルココルチコイドであるコルチゾール、 副腎アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)とその硫酸塩であるデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)の分泌が生体の必要量以下に慢性的に低下した状態である。 原発性の慢性副腎不全は1855年英国の内科医であるThomas Addisonにより初めて報告された疾患であることから、Addison病とも呼ばれている。その後、この原発性慢性副腎皮質機能低下症の病因として、 副腎皮質ステロイド合成酵素欠損症による先天性副腎皮質過形成症、先天性副腎低形成(X連鎖性、常染色体性)、ACTH不応症などが同定され責任遺伝子も明らかにされ、先天性のものはアジソン病とは独立した疾患単位として扱われるようになった。このため、アジソン病は後天性の成因による病態を総称する用語と して用いられている。

分類と病因

病因として感染症あるいはその他原因によるものと特発性がある。感染症では結核性が代表的であるが、真菌性や後天性免疫不全症候群(AIDS)に合併するものが増えている。特発性アジソン病は自己免疫性副腎皮質炎による副腎皮質低下症であり、しばしば他の自己免疫性内分泌異常を合併し多腺性自己免疫症候群と呼ばれている。これには特発性副甲状腺機能低下症、皮膚カンジダ症を合併するI型(HAM症候群)と、橋本病あるいは1型糖尿病などを合併するII型(Schmidt症候群)がある。タイプIVは二つ異常の自己免疫疾患が合併することがあるもので、たとえばアジソン病と悪性貧血、アジソン病と尋常性白斑、アジソン病と脱毛などの合併するものをいう。特発性アジソン病では抗副腎抗体陽性のことが多く(60~70%)、ステロイド合成酵素のP450c21, P450c17などが標的自己抗原とされている。その他癌の副腎転移、代謝異常などによる副腎の変性・萎縮を起こすWolman 病などが病因としてある。

疫学

我が国で行われた全国調査(厚生労働省特定疾患内分泌系疾患調査研究班「副腎ホルモン産生異常症」調査分科会)の報告によるとアジソン病の患者数は1年間で660例と推定され、病因としては特発性が42.2%、結核性が36.7%、その他が19.3%であり、時代を追うごとに特発性の比率が増加している。

症状

副腎皮質ホルモンの欠落により、易疲労感、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、体重減少、低血圧などがみられる。食欲不振、悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状、精神症状(無気力、不安、うつ)など様々な症状を訴える。いずれも非特異的な症状である。色素沈着は皮膚、肘や膝などの関節部、爪床、口腔内にみられる。青年期以降では女性では腋毛、恥毛の脱落を示すことがある。

治療

急性副腎不全の発症時には、グルココルチコイドとミネラルコルチコイドの速やかな補充と、水分・塩分・糖分の補給が必要であり、 治療が遅れれば生命にかかわる。その後も生涯にわたりグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの補充が必要である。新生児期・乳児期には食塩の補充も必要となる。 治療が軌道に乗った後も、発熱などのストレスにさらされた際には副腎不全を起こして重篤な状態に陥ることがあるため、ストレス時にはグルココルチコイドの内服量を通常の2~3倍服用する。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会