診断基準
A 症状
■自覚的所見
■他覚的所見
1) 全く神経脱落所見がないもの
2) 二分脊椎・脊髄髄膜瘤など脊髄に先天的異常を伴うもの
3) 脳性麻痺で代表される脳原性疾患によるもの
4) 脊柱変形が高度になり脊髄が圧迫されるもの
その病的状態では反射亢進や低下、病的反射などを認め、痙性麻痺や弛緩性麻痺などが合併する。筋力低下も原疾患自体に大きく影響を受け、先天性筋疾患では四肢近位筋や遠位筋の筋萎縮が生じ、立位歩行が困難/不可となる。
B 検査所見
全脊柱・胸郭X線単純撮影画像:未成熟な状態(10才未満など)で胸郭変形や脊柱変形を確認する
C 遺伝学的検査等
本症候群にはJarcho-Levin症候群など明らかに遺伝学的検査で異常が認められるものもある。多くの疾患が含まれる症候群であり、現在多くの原疾患において遺伝子異常や染色体異常が確認できている。しかし、保険適応となっている疾患は僅かである。
D 鑑別診断
肺実質臓器や気道に異常を来す疾患はすべて鑑別する対象疾患となる。また、画像所見では診断基準に入らないが未だ未成熟で将来の悪化が不明なもの。
E-1 確実例
未成熟な小児において、自覚所見がなく、他覚的所見としては胸郭変形や脊柱変形がわずかでも、Bの検査にてX線単純撮影画像にて早期発症側弯症の分類に含まれる先天性側弯症、乳児期特発性側弯症、神経筋原性側弯症、症候群性側弯症で、進行性(未治療な状態で年10度以上の進行、あるいは高度な胸郭の変形を認めた場合、確実例とする。
未成熟な小児において、明らかに胸郭変形により呼吸機能障害をきたしている場合もこの中に含まれる。
E-2 疑い例
• 幼小児期に25度以上で装具やギプス治療対象となる構築性側弯があるが、進行性かどうかはっきりしない場合。あるいは、治療に反応し、思春期まで側弯の悪化が認められない症例
・胸郭変形と脊柱変形が年5-10度の悪化が認められた場合に確定。
• 未成熟な時期に胸郭変形を認めるが、診察時には治療適応とは言えず、経過観察で様子を見る症例
・経過観察し、胸郭変形や脊柱変形が未成熟な時期に10度以上の悪化を示し、装具治療/ギプス治療、あるいは手術適応となった場合に確定。
• 未成熟な時期に胸郭変形を伴う先天性側弯症やその他の脊柱変形を認めるが、進行性かどうか明確でなく、ギプスや装具治療、あるいは手術適応がどうか、しばらく成長を見ながら経過観察する症例
・経過観察中、胸郭変形や脊柱変形が未成熟な時期に10度以上の悪化を示し、ギプス治療、あるいは手術適応となった場合に確定。
■自覚的所見
- 10才以下の小児の場合、特に、幼弱で未成熟な時期では脊柱変形や変形の程度も軽度なことが多いため、自覚症状は本症候群の診断に必須となるものではない。
- 脊柱・胸郭変形が悪化により、病態に応じて体幹のプロポーションの乱れ、外見的な問題に対する訴え、背部痛、体動時の息切れ、睡眠時低呼吸/無呼吸状態、安静時における呼吸数の増加、マリオネットサインなどを認める。
- 体型的には原疾患により、極度な痩せ、肥満など症例ごとで差がある。身長に関しては、低身長を呈するものから正常範囲のものまで様々。
■他覚的所見
- 外見的な異常:左右非対称な胸郭や体幹、体幹短縮や冠状面バランスの不良、肩や腰のラインの不均衡、前屈テストで高度な背部隆起などを認める。高度側弯では”windswept thorax”胸郭が発生する。その他クリスマスツリー状の狭胸郭、短縮し前後方向に広がった樽状胸郭などの胸郭変形なども疾患によって認める。
- 呼吸状態としては全く正常な呼吸状態から呼吸数30を越えるような努力性呼吸状態まで認める。高度な場合には喘鳴も確認できる。
- 神経症状は原疾患のタイプにより下記のような状態がある。
1) 全く神経脱落所見がないもの
2) 二分脊椎・脊髄髄膜瘤など脊髄に先天的異常を伴うもの
3) 脳性麻痺で代表される脳原性疾患によるもの
4) 脊柱変形が高度になり脊髄が圧迫されるもの
その病的状態では反射亢進や低下、病的反射などを認め、痙性麻痺や弛緩性麻痺などが合併する。筋力低下も原疾患自体に大きく影響を受け、先天性筋疾患では四肢近位筋や遠位筋の筋萎縮が生じ、立位歩行が困難/不可となる。
B 検査所見
全脊柱・胸郭X線単純撮影画像:未成熟な状態(10才未満など)で胸郭変形や脊柱変形を確認する
- 一次性:肋骨の先天性異常が少なくとも一側でおよそ1/3以上の範囲で認められるもの。明らかに進行性の先天性側弯がある場合は一側で1/3以下の肋骨異常がある場合でも個別に検討する。
- 二次性:進行性脊柱変形(側弯、後弯、前弯など)により胸郭変形が生じているもの。具体的には早期発症側弯症(C-EOS)の分類に準じ、胸椎を含む脊柱で側弯が50度以上、あるいは悪化が年10度以上認められる症例は本症候群と診断する。SAL (Space Available of the Lung)は片側罹患症例で評価する基準であるが、進行性の側弯でSALがおよそ85%以下であれば本症と診断する。
- 医原性:胸郭の1/3以上の部分欠損、またはそれ以下でも進行性の脊柱変形の存在が確認できれば本症と診断する。
- X線画像所見に加え、さらに呼吸機能検査、6分間歩行検査で正常範囲を極度に逸脱して低値を示すもの。
C 遺伝学的検査等
本症候群にはJarcho-Levin症候群など明らかに遺伝学的検査で異常が認められるものもある。多くの疾患が含まれる症候群であり、現在多くの原疾患において遺伝子異常や染色体異常が確認できている。しかし、保険適応となっている疾患は僅かである。
D 鑑別診断
肺実質臓器や気道に異常を来す疾患はすべて鑑別する対象疾患となる。また、画像所見では診断基準に入らないが未だ未成熟で将来の悪化が不明なもの。
E-1 確実例
未成熟な小児において、自覚所見がなく、他覚的所見としては胸郭変形や脊柱変形がわずかでも、Bの検査にてX線単純撮影画像にて早期発症側弯症の分類に含まれる先天性側弯症、乳児期特発性側弯症、神経筋原性側弯症、症候群性側弯症で、進行性(未治療な状態で年10度以上の進行、あるいは高度な胸郭の変形を認めた場合、確実例とする。
未成熟な小児において、明らかに胸郭変形により呼吸機能障害をきたしている場合もこの中に含まれる。
E-2 疑い例
• 幼小児期に25度以上で装具やギプス治療対象となる構築性側弯があるが、進行性かどうかはっきりしない場合。あるいは、治療に反応し、思春期まで側弯の悪化が認められない症例
・胸郭変形と脊柱変形が年5-10度の悪化が認められた場合に確定。
• 未成熟な時期に胸郭変形を認めるが、診察時には治療適応とは言えず、経過観察で様子を見る症例
・経過観察し、胸郭変形や脊柱変形が未成熟な時期に10度以上の悪化を示し、装具治療/ギプス治療、あるいは手術適応となった場合に確定。
• 未成熟な時期に胸郭変形を伴う先天性側弯症やその他の脊柱変形を認めるが、進行性かどうか明確でなく、ギプスや装具治療、あるいは手術適応がどうか、しばらく成長を見ながら経過観察する症例
・経過観察中、胸郭変形や脊柱変形が未成熟な時期に10度以上の悪化を示し、ギプス治療、あるいは手術適応となった場合に確定。
参考文献
- 1. Campbell RM Jr, Smith MD, Mayes TC, et al. The characteristics of thoracic insufficiency syndrome associated with fused ribs and congenital scoliosis. J Bone Joint Surg Am. 2003; 85-A: 399-408.
- 2. Campbell RM Jr, Smith MD: Thoracic insufficiency syndrome and exotic scoliosis. J Bone Joint Surg Am 2007; 89(suppl1):108-122.
- 3. Kawakami N, et al. Radiographic analysis of the progression of congenital scoliosis with rib anomalies during the growth period. ArgoSpine News & Journal. 2012; 24: 56-61.
- 4. Williams BA, et al. Development and Initial Validation of the Classification of Early-Onset Scoliosis (C-EOS). J Bone Joint Surg 2014; 96: 1359-1367.
当該事業における対象基準
次のいずれかに該当する場合
ア. 脊柱変形に対して治療が必要な場合
イ. 呼吸管理(人工呼吸器、気管切開述後、経鼻エアウェイなどの処置を必要とするものをいう。) 又は酸素療法を行う場合
ウ. 中心静脈栄養または経管栄養を行う場合
エ. 脊髄障害による排尿障害、排便障害がみられる場合
ア. 脊柱変形に対して治療が必要な場合
イ. 呼吸管理(人工呼吸器、気管切開述後、経鼻エアウェイなどの処置を必要とするものをいう。) 又は酸素療法を行う場合
ウ. 中心静脈栄養または経管栄養を行う場合
エ. 脊髄障害による排尿障害、排便障害がみられる場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2018年1月31日