診断の手引き

  1. 皮膚疾患群
  2. 大分類: スティーヴンス・ジョンソン症候群
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スティーヴンス・ジョンソン症候群(中毒性表皮壊死症を含む。)

すてぃーゔんす・じょんそんしょうこうぐん(ちゅうどくせい ひょうひえししょうをふくむ)

Stevens-Johnson syndrome; Toxic epidermal necrolysis

告示

番号:3

疾病名:スティーヴンス・ジョンソン症候群(中毒性表皮壊死症を含む。)

診断基準

A 症状

診断方法

スティーヴンス・ジョンソン(Stevens-Johnson)症候群(Stevens-Johnson 症候群:SJS)
(1)主要所見(必須)
  1. 皮膚粘膜移行部の重篤で広範囲な粘膜病変(出血・痂疲を伴うびらん等)がみられる。
  2. 皮膚の汎発性の紅斑に伴って表皮の壊死性障害に基づくびらん・水疱を認め,軽快後には痂皮,膜様落屑がみられる。その面積は体表面積の10%未満である。但し,外力を加えると表皮が容易に剝離すると思われる部位はこの面積に含まれる。
  3. 発熱がある
  4. 病理組織学的に表皮の壊死性変化がみられる。
  5. 重症型の多形紅斑(erythema multiforme major: EM major)を除外できる。(鑑別診断の項を参照)

(2)副所見
  1. 紅斑は顔面・体幹優位に分布する。中央が暗紅色で隆起しない標的状紅斑( flat‌ atypical‌ targets)を示し、融合傾向を認める。
  2. 眼病変では偽膜形成と眼表面上皮欠損のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の急性結膜炎がみられる。
  3. 全身症状として重症感や倦怠感を伴う。口腔内の疼痛や咽頭痛のため,摂食障害を伴う。
  4. 自己免疫性水庖症を除外できる。

中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis:TEN)
(1)主要所見(必須)
  1. 広範囲に分布する紅斑に加え体表面積の 10%を 超える水疱・びらんがみられる。外力を加えると表皮が容易に剝離すると思われる部位はこの面積に含める。(なお,国際基準に準じて体表面積の 10~30%の 表皮剝離は,SJS/TEN オーバーラップと診断してもよい)
  2. 発熱がある.
  3. 以下の疾患を除外できる。・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS) ・トキシックショック症候群 ・伝染性膿痂疹 ・急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP) ・自己免疫性水疱症
(TENの場合、びまん性紅斑進展型では稀に粘膜症状がみられないことがあるため皮膚粘膜移行部の粘膜病変は副所見に含まれる)

(2)副所見
  1. 初期病変は広範囲にみられる斑状紅斑で,その特徴は隆起せず,中央が暗紅色の flat atypical targets もしくはびまん性紅斑である。紅斑は顔面,頸部,体幹優位に分布する。
  2. 皮膚粘膜移行部の粘膜病変を伴う.眼病変では偽膜形成と眼表面上皮欠損のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の急性結膜炎がみられる。
  3. 全身症状として他覚的に重症感,自覚的には倦怠 感を伴う。口腔内の疼痛や咽頭痛のため,種々の程度に摂食障害を伴う。
  4. 病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める。完成した病像では表皮の全層性壊死を呈するが,軽度の病変でも少なくとも 200 倍視野で10 個以上の表皮細胞(壊)死を確認することが望ましい。

B 検査所見

血液検査でCRPやアミロイドAの上昇、びらん面の拡大による低蛋白血症、電解質異常がみられるが、疾患に特徴的な検査所見はない。病変部の皮膚生検では、病理組織学的に完成した病像では表皮の全層性 壊死を呈するが,少なくとも 200 倍視野で10 個以上の 表皮細胞(壊)死を確認することが望ましい。
合併する臓器障害により、血液中の肝酵素やビリルビン値の上昇、クレアチニン上昇、末梢血異常(白血球減少、血小板減少、貧血)、血中酸素濃度の低下、便潜血陽性、尿タンパク陽性などがみられる。

C 遺伝学的検査等

アロプリノールによるSJS患者においてはHLA-B*58:01の検出率が高い。カルバマゼピンによる SJSでは東南アジアで関連が指摘されている HLA-B*15:02は日本人患者では検出されず, HLA-A*31:01の検出率が高い。眼障害を伴った感冒薬によるSJS患者ではHLA-A*02:06の検出率が高い。

しかしながら、現在これらの検査は保険適用がないため日常診療では施行されていない。

D 鑑別診断

重症型の多形紅斑は、比較的軽度の粘膜病変を伴う多形紅斑で、皮疹は典型的ターゲット状紅斑を示し,四肢優位に分布する。SJSとの鑑別は,他覚的な重症感、自覚的な倦怠感、治療への反応,病理組織所見における表皮の壊死性変化の程度などを加味して総合的に判断する。

E-1 確実例

診断
<SJS>副所見を十分に考慮して主要所見5項目を全て満たす場合、SJSと診断する。初期は診断基準を満たさない場合や、逆に病勢の進行によりTENへ移行する場合もあり、全経過を通して評価・診断する。
<TEN>副所見を十分に考慮の上、主要所見3項目を全て満たす場合、TENと診断する。

E-2 疑い例

皮疹が比較的軽症(紅斑が四肢に散在するなど)や、まれに粘膜疹のみのSJSもあることから、粘膜疹が重篤(粘膜上皮の壊死、出血性びらんなど)ならSJSを疑う。
皮膚生検が施行できない場合は、主要所見の1-3を満たすものを副所見を参考にして疑い例と診断する。

参考文献

引用および参考にした診断基準:
  1. 重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会: 重症多形滲出性紅斑スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症診療ガイドライン. 日本皮膚科学会雑誌 126, 1637-1687, 2016.

当該事業における対象基準

治療が必要な場合
:バージョン1.0
更新日
:2019年7月1日
文責
:日本小児皮膚科学会