1. 皮膚疾患群
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スティーヴンス・ジョンソン症候群(中毒性表皮壊死症を含む。)

すてぃーゔんす・じょんそんしょうこうぐん(ちゅうどくせい ひょうひえししょうをふくむ)

Stevens-Johnson syndrome; Toxic epidermal necrolysis

告示

番号:3

疾病名:スティーヴンス・ジョンソン症候群(中毒性表皮壊死症を含む。)

概念・定義

スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS:Stevens-Johnson 症候群)は、38℃以上の高熱を伴い全身の皮膚に紅斑や水疱・びらんを生じる疾患で、眼結膜や角膜、口唇・口腔粘膜、陰部などにびらんや出血といった重篤な粘膜疹を認めるのが特徴である。皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれる。中毒性表皮壊死症は皮膚のびらん面積が10%以上に拡大したものをさす。眼症状が強い場合には、治療が遅れると視力の低下や失明などの後遺症が残ることがある。早期に診断して適切な治療を開始しないと生命に関わる場合がある。

病因

多くは、医薬品が原因と考えられている。小児では単純ヘルペスウイルスなどのウイルス感染やマイコプラズマ感染、ワクチン接種などにより発症することが知られている。原因となる医薬品には抗菌薬、鎮痛・解熱薬、感冒薬、抗てんかん薬、消化性潰瘍薬などがある。

疫学

・スティーヴンス・ジョンソン症候群(中毒性表皮壊死症を含む)の発症頻度は人口100万人あたり5-13人と報告されている。

臨床症状

急性期の主要所見として、①皮膚:全身の多形紅斑・水疱・びらん・潰瘍・表皮の剥離。②粘膜:口唇・口腔・鼻腔・外陰部のびらん③眼:結膜充血、眼脂、角膜びらん、偽膜形成。
④その他:発熱(38℃以上)、全身倦怠感、咽頭痛、排尿排便時痛。

・臨床経過 原因薬剤を開始後、約2週間以内に発症をすることが多いが、数日以内の発症や、1か月以上経過してから発症することもある。眼症状は両眼にみられ、皮膚粘膜の症状発現より1日ほど早いか、ほぼ同時に現れる。

検査所見 

急性期には、この疾患を診断する上での特徴的な血液検査所見はない。
皮膚生検所見として、病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める。完成した病像では表皮の全層性壊死を呈するが,軽度の病変でも少なくとも 200 倍視野で10 個以上の表皮細胞(壊)死を確認することが望ましい(「診断の手引き」より)。
 経過中または治癒後に、被疑医薬品によるリンパ球刺激試験(DLST)や皮膚パッチテストで原因医薬品の特定ができる場合がある。

診断の際の留意点

多形紅斑とともにびらんを伴わない発赤のみの口唇炎や軽度の結膜充血のみがみられる場合はスティーブンス・ジョンソン症候群ではなく多形紅斑重症型と診断する。小児の場合、多形紅斑重症型はウイルス感染や細菌感染が原因となることが多い。
皮膚の病理組織診断は、生検する部位とタイミングにより所見が異なるので、典型的な所見が得られなかったときには臨床経過と合わせて診断する。
DLSTや皮膚テストは被疑医薬品であっても必ずしも陽性にならず、またDLSTは非ステロイド性消炎剤や漢方薬など非特異的反応がみられることがあるので、あくまで参考にとどめる。
医薬品が原因と疑われる場合、使用法や適応が正しく守られている場合は、原因医薬品が確定しなくても医薬品副作用被害救済制度による医療費等の給付が受けられる。

治療

原則、入院治療を行う。まず、原因として疑われる医薬品を中止するのが第一である。さらに、可能な限り使用中のすべての医薬品を中止する。皮膚や口唇・外陰部の病変に対しては感染に注意して軟膏の貼布を行う。特に眼症状は重症化すると後遺症を残すため、眼科医による厳格な管理のもと抗菌薬とステロイド点眼薬や眼軟膏による治療および偽膜除去が必要である。
全身療法としては中等量~高用量ステロイド全身投与が一般的である。数日の経過で改善がみられない場合や病勢が進行する場合は、ステロイドパルス療法、血漿交換療法、大量免疫グロブリン製剤静注療法をステロイドに併用する。

合併症

皮膚以外に肝臓、消化管、肺、腎臓などに臓器障害を生じる。肝機能障害、消化管障害(下痢,血便,小腸潰瘍,大腸穿孔,腸重積)、肺炎、閉塞性汎細気管支炎、間質性肺炎、腎前性腎不全、白血球や血小板減少、皮膚や粘膜のびらんに伴う二次的な細菌性感染症・敗血症など。

予後

早期に診断をして、適切な治療をしないと、合併症や感染症により生命に関わる場合がある。致死率はティーヴンス・ジョンソンで3-5%、中毒性表皮壊死症で20-30%とされる。後遺症としては、①眼:角膜潰瘍、視力障害・失明、眼瞼癒着、眼瞼内反、睫毛乱生、乾燥性角結膜炎、②皮膚:爪の脱落・形成障害、色素脱失、色素沈着、瘢痕、脱毛。③粘膜:治癒後の癒着による包茎・陰唇癒着・腟口狭窄、口腔・食道・気管粘膜潰瘍と狭窄、④その他:肝機能障害、腸管病変、閉塞性肺障害、膵外分泌腺障害、唾液腺分泌障害などがある。 

成人期以降の注意点

重篤な眼後遺症である角膜障害による視力障害・失明はQOLに著しく影響するため、成人期においても手術による治療が行われることがある。そのため、小児慢性特定疾病制度から指定難病制度へのシームレスな支援の移行が必要とされる。
同じまたは類似医薬品を使用すると再度発症すること、感染症による場合は再感染により再発性となる可能性があることを伝え、注意を促す。

参考文献


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:バージョン1.0
更新日
:2019年7月1日
文責
:日本小児皮膚科学会