診断の手引き

  1. 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
  2. 大分類: 染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群
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モワット・ウィルソン(Mowat-Wilson)症候群

もわっと・うぃるそんしょうこうぐん

Mowat-Wilson syndrome

告示

番号:31

疾病名:モワット・ウィルソン症候群

診断基準

A 症状

Major Criteria
1. 重度(中等度)精神運動発達遅滞(必須)
2. 特徴的な顔貌(必須):下記の3項目の内の2項目以上
ア)特徴的耳介形態(前向きに持ち上がった耳たぶ。中央が陥凹した耳たぶ)
イ)特徴的眼周囲所見(眼間開離、内側が濃い眉毛)
ウ)特徴的頭部形態(細長い顔、尖ったあご、目立つ鼻柱)
3. 小頭症

Minor Criteria
1. 巨大結腸症(ヒルシュスプルング病)、難治性便秘
2. 細長い手指と四肢
3. 成長障害
4. 脳梁形成異常
5. 先天性心疾患
6. てんかん
7. 腎泌尿器奇形

参考所見
1. 中耳炎
2. 側弯症


B 検査所見

1. 血液・生化学的検査所見:異常なし。
2. 画像検査所見:脳 MRI で約半数の患者に脳梁の形成異常が見られる。
3. 生理学的所見:報告なし。
4. 病理所見:報告なし。
5. 知能検査(IQ、DQ):重度あるいは中等度知的障害。


C 遺伝学的検査等

片方の ZEB2(別名、ZFHX1B、SIP1)遺伝子に機能消失性変異(欠失、ナンセンス変異、フレームシフト変異)が同定されれば、確定診断とする。


D 鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。
1)ゴールドバーグ・シュプリンツェン巨大結腸(Goldberg-Shprintzen megacolon)症候群:常染色体劣性の疾患であり、病因遺伝子は 10q22.1 に局在する KIAA1279 遺伝子である。
2)アンジェルマン(Angelman)症候群、1p36 欠失症候群、ルビンスタイン・ティビ(Rubinstein-Taybi)症候群:これらの疾患は、精神遅滞が重度で言葉がなく、下顎が目立ち、歩容(不安定な歩き方)の点でモワット・ウィルソン症候群に類似している。しかし、モワット・ウィルソン症候群とは特徴的顔貌の有無で容易に鑑別できる。


E-1 確実例

Definite、Probable を対象とする。
(Major Criteria の1と2の2項目は、全症例に認められる。)
Definite:Major Criteria のうち3項目、あるいは、Major Criteria のうち2項目と Minor Criteria3項目以上を満たし、D を除外し、C を満たすもの。
Probable:Major Criteriaのうち3項目、あるいは、Major Criteriaのうち2項目と Minor Criteria3項目以上を満たし、D を除外したもの。
Possible:Major Criteria のうち2項目と Minor Criteria2項目以下を満たすもの。

当該事業における対象基準

基準(ア)、基準(イ)又は基準(ウ)を満たす場合
【基準(ア)】
症状として、けいれん発作、意識障害、体温調節異常、骨折又は脱臼のうち一つ以上続く場合であること。
【基準(イ)】
治療で強心薬、利尿薬、抗不整脈薬、抗血小板薬、抗凝固薬、末梢血管拡張薬又はβ遮断薬のうち一つ以上が投与されている場合であること。
【基準(ウ)】
治療で呼吸管理(人工呼吸器、気管切開術後、経鼻エアウェイ等の処置を必要とするものをいう。)、酸素療法又は胃管、胃瘻、中心静脈栄養等による栄養のうち一つ以上を行う場合であること。
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児遺伝学会