概念・定義
モワット・ウィルソン(Mowat-Wilson)症候群は、特徴的顔貌、重度から中等度の知的障害と小頭症を3主徴とする先天異常症候群である。転写因子であるZEB2(別名、ZFHX1B、SIP1)遺伝子の片側のアリルの機能喪失型変異で発症する。通常、発語は見られず、歩行開始も3歳以降である。てんかん、巨大結腸症、先天性心疾患などの合併が見られる。食事、排せつなど日常生活の介護が終身必要である。
病因
両親から受け継いだ2個のZEB2遺伝子の中の1個の機能が喪失して(機能喪失型変異)発症する。ZEB2遺伝子変異によって脳神経細胞と神経堤細胞の機能に異常をきたすが、その詳細な病態は不明である。
臨床症状
特徴的顔貌(内側部が濃い眉毛、吊り上った耳たぶ、尖った顎)は100%、重度から中等度の知的障害は100%、小頭症が約80%の患者に見られる。さらに、てんかんは約70%、先天性心疾患、巨大結腸症(ヒルシュスプルング病)、停留精巣や尿道下裂などの腎・泌尿生殖器の奇形と脳梁の形成異常が約半数の患者に見られる。
治療
現時点では根本的な治療法はない。先天性心疾患、巨大結腸症、尿道下裂などの先天奇形は外科的に治療を行う。バルプロ酸ナトリウムは約半数のてんかんに有効である。幼少期からの積極的な療育や訓練で身振りや指さしでのコミュニケーションが向上する場合もある。
予後
先天性心疾患などの内部奇形に対する根治的な治療がなされれば生命予後は比較的良好であると考えられる。平均寿命は不明である。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2018年1月31日
- 文責
- :日本小児遺伝学会