診断方法
以下のA. の 3 項目全て、ないしB. を満たした場合、自己免疫性腸症(IPEX症候群を含む)と診断する。
A. 臨床症状・検査所見
- 食餌療法・完全静脈栄養で改善しない慢性難治性下痢症
- 十二指腸・小腸生検で絨毛萎縮,粘膜固有層への単核細胞・形質細胞を中心とした細胞浸潤を認める。
- 正常腸管を用いた免疫組織学的方法で血清中に抗腸管上皮細胞抗体が検出される。
ただし既に同定されている自己抗原(AIE-75, villin)に対する自己抗体が陽性であれば本項目 を満たすものとする。
B. 遺伝子診断
Forkhead box p3 (FOXP3 )遺伝子に変異を有する。
参考条項
- 自己免疫性腸症は以下のような他の自己免疫疾患を合併する例が多く,その場合には多腺性内分泌不全症、腸疾患を伴う。伴性劣性免疫調節異常(immunedysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, Xlinked;IPEX)症候群を疑って,FOXP3 遺伝子変異を検索する。
- IPEX 症候群でも消化器症状を伴わないことがあるが,責任遺伝子FOXP3 に変異を有するものは自己免疫性腸症のカテゴリーに含めるものとする。
- 下痢の多くは分泌性下痢であるが,時にタンパク漏出性胃腸症を呈することがある。
- FOXP3 遺伝子変異を認めない自己免疫性腸症が希ながら存在する。
- 食物アレルギーを合併して該当する食物によって下痢が悪化することはあるが,除去食によっても十分な改善を見ない。
表1. IPEX症候群の臨床像
罹患臓器 | 疾患 | 自己抗体 |
---|---|---|
消化器 | 自己免疫性腸炎 | 抗AIE-75抗体、抗villin抗体 |
食物アレルギー | 抗食物抗原(IgE) | |
肝炎、胆管炎 | 抗平滑筋抗体、抗LKM抗体 | |
内分泌腺 | 甲状腺機能低下症 | 抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 |
1型糖尿病 | 抗GAD抗体、抗ランゲルハンス島抗体 | |
血液 | 溶血性貧血 | クームス |
血小板減少 | 抗血小板抗体 | |
好中球減少症 | 抗好中球抗体 | |
腎臓 | 間質性腎炎 | 抗AIE-75抗体、抗villin抗体 |
糸球体腎炎、ネフローゼ症候群 | 抗TBM抗体など | |
神経 | 重症筋無力症 | 抗アセチルコリン受容体抗体 |
皮膚 | 湿疹、類天疱瘡様、乾癬様、禿瘡 | |
その他 | 全身性血管炎 |
当該事業における対象基準
疾病による症状がある場合又は治療を要する場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児栄養消化器肝臓学会