診断の手引き

  1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 脳クレアチン欠乏症候群
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脳クレアチン欠乏症候群

のうくれあちんけつぼうしょうこうぐん

Cerebral creatine deficiency syndrome

告示

番号:80

疾病名:脳クレアチン欠乏症候群

状態の程度

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合

診断基準

A 症状

1. 知的障害
2. 自閉症スペクトラム
3. てんかん
4. 言語発達遅滞
5. 筋緊張低下


B 検査所見

1. 末梢血液検査:特徴的な所見はありません。
2. 血液生化学的検査:特徴的な所見はありません。
3. 尿所見:特徴的な所見はありません。(生化学的検査は下記を参照)
4. 頭MRI:脳の構造異常(脳梁低形成など)が指摘されています。
5. 染色体検査:正常核型を示します。


C 遺伝学的検査等

1. 血液・生化学的検査所見:尿、血清、髄液中のクレアチン、クレアチニン、グアニジノ酢酸
 (ア) AGAT欠損症 診断に有効な所見なし。
 (イ) GAMT欠損症 尿中グアニジノ酢酸/クレアチニン比の上昇、血清および髄液中のグアニジノ酢酸の上昇 
 (ウ) SLC6A8欠損症(男性患者)尿中クレアチン(mg/dl)/クレアチニン(mg/dl)比の上昇(>2.0)、AGAT欠損症やGAMT欠損症では正常範囲。(注意;女性患者では正常範囲の可能性がある。)
2. 画像検査所見(3疾患に共通):脳の1H-MRスペクトロスコピー(MRS)におけるクレアチンピークの低下。
3. GATM遺伝子、GAMT遺伝子、SLC6A8遺伝子検査


D 鑑別診断

知的障害を呈するすべての疾患が対象となります。
脆弱X症候群、染色体異常、微細欠失重複症候群など


E-1 確実例

Aのうち「1.知的障害」を満たし、かつ
Cのうち「1.血液・生化学的検査所見」あるいは「2.画像診断」を満たし、
かつ、3.遺伝子変異が検出されたもの


E-2 疑い例

Aのうち「1.知的障害」を満たし、かつ
Cのうち「1.血液・生化学的検査所見」および「2.画像診断」を満たすもの

あるいは、

Aのうちの一つを満たし、かつ
Cのうち「1.血液・生化学的検査所見」を満たし、
Dの鑑別診断を除外したもの

参考文献

  • Wada T, Shimbo H, Osaka H. A simple screening method using ion chromatography for the diagnosis of cerebral creatine deficiency syndromes. Amino Acids 2012; 43:993-997.
  • Osaka H, Takagi A, Tsuyusaki Y, Wada T, Iai M, Yamashita S, Shimbo H, Saitsu H, Salomons GS, Jakobs C, Aida N, Toshihiro S, Kuhara T, Matsumoto N. Contiguous deletion of SLC6A8 and BAP31 in a patient with severe dystonia and sensorineural deafness. Mol Genet Metab 2012;106:43-47.
  • van de Kamp JM, et al. Phenotype and genotype in 101 males with X-linked creatine transporter deficiency. J Med Genet 50:463-72, 2013
  • Kato H, Miyake F, Shimbo H, Ohya M, Sugawara H, Aida N, Anzai R, Takagi M, Okuda M, Takano K, Wada T*, Iai M, Yamashita S, Osaka H. Urine screening for patients with developmental disabilities detected a patient with creatine transporter deficiency due to a novel missense mutation in SLC6A8. Brain Dev. 36:630-3, 2014
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  • Uemura T, Ito S, Ohta Y, Tachikawa M, Wada T, Terasaki T, Ohtsuki S. Abnormal N-Glycosylation of a Novel Missense Creatine Transporter Mutant, G561R, Associated with Cerebral Creatine Deficiency Syndromes Alters Transporter Activity and Localization. Biol Pharm Bull. 40:49-55, 2017
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児神経学会