診断基準
A 症状
(1) 中枢神経系
- 頭囲拡大:
- 生下時から頭囲が大きく、生後も頭囲拡大がみられる。+3SD以上になることが多い。大脳や小脳の肥大により大頭になる。小脳の肥大により小脳扁桃が下垂し、閉塞性の水頭症を呈し、さらに大頭が進行することがある。
- 精神運動発達遅滞:
- ほぼ全例で発達遅滞を呈するが、その程度は様々である。
- てんかん:
- 多小脳回が原因と考えられる。シルビウス裂近傍の多小脳回や片側巨脳症では特に難治になりやすく、てんかん手術をようすることがある。
(2) 皮膚所見
- 毛細血管奇形:
- 表在性、網目状で、苺状血管腫のような隆起性病変ではない。口唇上部正中が特徴的であるが、全身どこにでもみられる。入浴時や啼泣時など毛細血管が拡張すると顕著になる。一方、毛細血管拡張時以外は目立たず、軽微なこともあるので、注意を要する。
- 皮膚の過伸展:
- 結合組織の異常と考えらえている。
(3) その他
過成長、四肢・顔面・頭部の非対称、合指症、先天性心疾患(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症など)を認める。不整脈による突然死の報告もある。
B 検査所見
頭部MRIで多小脳回をはじめとする脳回異常、脳室拡大、小脳扁桃下垂、脳梁の肥大、大脳白質病変を認める。C 遺伝学的検査等
PI3K-AKT-mTORシグナル伝達系の遺伝子群であるAKT3, PIK3R2, PIK3CAが責任遺伝子である。PI3K-AKT-mTORシグナル伝達系は、さまざまな成長因子のリン酸化シグナルを細胞内に伝達し、細胞の増殖やアポトーシスに関与する。遺伝子診断は保険収載されておらず、研究室レベルで行われている。常染色体優性遺伝形式をとるが、突然変異の体細胞モザイクの場合もある。D 鑑別診断
ソトス症候群をはじめとする大頭、発達遅滞を呈する症候群E-1 確実例
日本での診断基準は定められていないため、海外からの論文から引用する。Martinez-Glez V et al. Am J Med Genet Part A 152A: 3101-3106, 2010より引用
大基準 (少なくとも3つを満たす)
- 大頭
- 毛細血管奇形
- 過成長 / 左右非対称
- 画像の変化※
小基準 (上記に加えて少なくとも2つを満たす)
- 合指症または多指症
- 水頭症
- 前頭部突出
- 顔面正中の毛細血管奇形
- 新生児期の低緊張
- 結合組織異常※※
- 発達遅滞
- ※
- 画像の変化:脳室拡大、透明中隔またはベルガ腔、小脳扁桃ヘルニア、大脳and/or小脳の左右差
- ※※
- 結合組織異常:関節の過剰可動性、皮膚の過剰弾性
参考文献
- Martinez-Glez V et al. Macrocephaly-capillary malformation: Analysis of 13 patients and review of the diagnostic criteria. Am J Med Genet Part A 152A: 3101-3106, 2010
- Mirzaa et al. Megalencephaly syndromes and activating mutations in the PI3K-AKT pathway: MPPH and MCAP. Am J Med Genet Part C Semin Med Genet 163c:122-130, 2013
- 岡本伸彦:Megalencephaly-capillary malformation-polymicrogyria(MCAP) および類縁疾患:別冊日本臨床 神経症候群IV 第2版(2014年)日本臨床社 p150-153
当該事業における対象基準
運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2019年7月1日
- 文責
- :日本小児神経学会