診断方法
A. 臨床症状
- 無症状から小脳・脳幹の障害による神経症状を呈する例まで、症状は様々である。大脳の形成異常を伴えば運動発達遅滞など大脳の症状を呈することがある。
- 水頭症は伴いやすいが、新生児などには水頭症を呈さないことがある。
B. 検査所見
診断には画像診断ではMRI(矢状断像と水平断像)が望ましい。
- ダンディー・ウォーカー症候群 次の①~③の形態的な特徴を持つ。新生児期に水頭症を呈さない例もあるため、水頭症の所見は必須ではない。また、第4脳室から大槽への髄液経路の閉鎖の所見も必須ではない。 ① 後頭蓋窩の拡大(静脈洞交会や小脳テントの挙上)
- Dandy-Walker variant(正式な日本語病名はない) ダンディー・ウォーカー症候群の画像検査所見の中で、②、③は呈するがその程度は軽く、①は伴わないが、水頭症の所見を伴う例がある。
- Blake’s pouch cyst(正式な日本語病名なし) 胎生期にBlake’s pouch(ブレイクス・ポーチ)がくも膜下腔に開放されず、嚢胞状に拡大するために発生し、水頭症を呈する場合がある。Blake’s pouch は胎生期に第4脳室の脈絡叢よりも尾側のarea membranacea inferiorから発生するため、造影検査で増強効果を受ける脈絡叢は小脳虫部の底部に認める。この点で、大槽部くも膜嚢胞や巨大大槽と鑑別できる。
② 小脳虫部の様々な程度の低形成
③ 第4脳室の嚢胞状の拡大
C.その他の重要な臨床所見、検査所見
ダンディー・ウォーカー症候群には、
- 大脳の形成異常を伴う例がある。
- 心臓など中胚葉性由来の臓器に先天性疾患を伴うことが多い。
- 染色体異常、遺伝子異常を伴うものがある。
D. 鑑別診断
- 巨大大槽 megacisterna magna:後頭蓋窩の脳組織に明らかな形成異常は伴わず、脳底部のくも膜下腔の拡大や大槽が拡大した所見を認める。健常児にも認め、無症状である。
- 後頭蓋窩くも膜嚢胞:髄液の貯留した嚢胞が大槽部から小脳背側部にかけて認めることが多い。嚢胞が大きければ、小脳、脳幹への圧迫所見や①後頭蓋窩の拡大の所見を認めることがあるが、②小脳虫部の低形成や③第4脳室の嚢胞状の拡大の所見は伴わない。嚢胞が大きければ、圧迫による神経症状や水頭症を伴う場合がある。
- 第4脳室の孤立性拡大:脳室内出血、細菌性髄膜炎、水頭症に対する髄液シャント治療などの後に、二次的に第4脳室が孤立性に拡大する場合を言い、小脳虫部の低形成は伴わない。第4脳室拡大による神経症状を呈することがある。
当該事業における対象基準
運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児神経学会、日本小児神経外科学会