診断方法
A. 症状
- ①
- 慢性溶血性貧血の一般症状: 貧血、黄疸、脾腫、胆石症。※1
- ②
- 特発性または続発性の脾機能亢進症: 脾腫。※2
B. 検査所見
- ①
- 溶血性貧血: Hb低下、網状赤血球増多、間接ビリルビン増加、LDH増加、ハプトグロビン低下、ヘモグロビン尿。
- ②
- その他の血液検査所見: 赤血球以外の血球減少を認めることがある。肝機能障害を認める場合も少なくない。
- ③
- 赤血球形態: 一般に赤血球形態異常は認めない。※3
- ④
- 骨髄像: 骨髄赤芽球の過形成像。白血病細胞等の腫瘍細胞浸潤や骨髄繊維化を認めない。
- ⑤
- 画像検査: 腹部超音波検査や腹部CT検査にて、脾腫、腹水、脾静脈の拡張・蛇行、肝繊維化等を認める。
- ⑥
- 直接抗グロブリン試験陰性
C. 除外項目※4
- ①
- 球状赤血球症やサラセミア等の遺伝性溶血性貧血や自己免疫性溶血性貧血に伴う脾機能亢進症を除く。
- ②
- 白血病や悪性リンパ腫等の骨髄・リンパ増殖性疾患に伴う脾機能亢進症を除く。
- ③
- その他の浸潤性疾患 (骨髄線維症、Gaucher病、Niemann-Pick病、糖原病、アミロイドーシス)に伴う脾機能亢進症を除く。
- ④
- 感染症 (伝染性単核球症、結核、マラリア等)や炎症性疾患 (SLE、サルコイドーシス、Felty症候群等)に伴う脾機能亢進症を除く。
診断
脾機能亢進症に伴う溶血性貧血の所見を認め、除外項目を満たした場合に本診断とする。
参考条項
- ※1)
- ヘモグロビンの減少1gにつき,脾臓は肋骨縁の下で約2cm拡大していると予測される。 超音波で証明された脾腫の検出感度は、触診が60~70%、打診が60~80%であり、脾腫の有無は画像検査で確認することが望ましい。正常でやせた人の最大3%で脾臓が触知可能である。
- ※2)
- 特発性門脈圧亢進症 (Banti症候群)肝内前類洞性の血管抵抗性増大により門脈圧高進症を引き起こす原因不明の非硬変性肝疾患。巨脾と貧血を特徴とする。門脈圧亢進の程度から重症度に応じ、食道・胃静脈瘤、異所性静脈瘤、門脈圧亢進症性胃症、腹水、出血傾向、肝機能障害などの症候を示す。
- ※3)
- 球状赤血球症等の遺伝性溶血性貧血を除く。代償性造血亢進に伴う相対的な鉄や葉酸等の欠乏が生じた場合には、赤血球サイズの変化を伴い得る。
- ※4)
- 脾機能亢進症を来す疾患
- 遺伝性溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、サラセミア、鎌状赤血球症
- 自己免疫性血球減少、免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症
- 感染症・炎症 伝染性単核球症、感染性心内膜炎、粟粒結核、若年性特発性関節炎、SLE
- うっ血、肝硬変、門脈または脾静脈血栓・閉塞、特発性門脈圧亢進症、うっ血性心不全
- 浸潤性疾患、白血病、悪性リンパ腫、真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症、Gaucher病、Niemann-Pick病、糖原病、アミロイドーシス
当該事業における対象基準
治療で補充療法、G-CSF療法、除鉄剤の投与、抗凝固療法、ステロイド薬の投与、免疫抑制薬の投与、抗腫瘍薬の投与、再発予防法、造血幹細胞移植、腹膜透析又は血液透析のうち、一つ以上を継続的に実施する(断続的な場合も含めておおむね6か月以上)場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会