診断方法
主要な症状
貧血、黄疸、しばしば脾腫
溶血性貧血の診断基準
- 臨床所見として、通常、貧血と黄疸を認め、しばしば脾腫を触知する。ヘモグロビン尿や胆石を伴うことがある。
- 以下の検査所見がみられる。
①ヘモグロビン濃度低下
②網赤血球増加
③血清間接ビリルビン値上昇
④尿中・便中ウロビリン体増加
⑤血清パプトグロビン値低下
⑥骨髄赤芽球増加 - 貧血と黄疸を伴うが、溶血を主因としない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道系疾患、体質性黄疸など)を除外する。
- 1.、2.によって溶血性貧血を疑い、3.によって他疾患を除外し、診断の確実性を増す。しかし、溶血性貧血の診断だけでは不十分であり、特異性の高い検査によって病型を確定する。
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断基準
- 溶血性貧血の診断基準を満たす。
- 広スペクトル抗血清による直接抗グロブリン試験が陽性である。
- 同種免疫性溶血性貧血(不適合輸血、新生児溶血性疾患)および薬剤起因性免疫性溶血性貧血を除外する。
- 1.~3.によって診断するが、さらに抗赤血球自己抗体の反応至適温度によって、温式(37℃)の1)と、冷式(4℃)の2)および3)に区分する。
- 以下によって経過分類と病因分類を行う。
- 急性:推定発病または診断から6ヶ月までに治癒する。
- 慢性:推定発病または診断から6ヶ月以上遷延する。
- 特発性:基礎疾患を認めない
- 続発性:先行または随伴する基礎疾患を認める。
- 参考
1)温式自己免疫性溶血性貧血
2)寒冷凝集素症
3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症
1)診断には赤血球の形態所見(球状赤血球、赤血球凝集等)も参考になる。
2)温式AIHAでは、常用法による直接抗グロブリン試験が陰性のことがある(クームス陰性AIHA)。
3)特発性温式AIHAに特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が合併することがある(Evans症候群)。また、寒冷凝集素価の上昇を伴う混合型も見られる。
4)寒冷凝集素症での溶血は寒冷凝集素価と平行するとは限らず低力価でも溶血症状を示すことがある(低力価寒冷凝集素症)。
5)自己抗体の性状の判定には抗体遊出法等を行う。
6)基礎疾患には自己免疫疾患、リウマチ生疾患、リンパ増殖性疾患、免疫不全症、腫瘍、感染症(マイコプラズマ、ウイルス)等が含まれる。特発性で経過中にこれらの疾患が顕在化することがある。
7)薬剤起因性自己免疫性溶血性貧血でも広スペクトル抗血清による直接抗グロブリン試験が陽性となるので留意する。診断には臨床経過、薬剤中止の影響、薬剤特異性抗体の検出等が参考になる。
当該事業における対象基準
治療で補充療法、G-CSF療法、除鉄剤の投与、抗凝固療法、ステロイド薬の投与、免疫抑制薬の投与、抗腫瘍薬の投与、再発予防法、造血幹細胞移植、腹膜透析又は血液透析のうち、一つ以上を継続的に実施する(断続的な場合も含めておおむね6か月以上)場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会