診断方法
A. 診断基準
- 1歳未満である。
- 大球性貧血(あるいは正球性貧血)で他の2系の血球減少を認めない。
- 網状赤血球減少を認める。
- 赤芽球前駆細胞の消失を伴う正形成骨髄所見を有する。
- 古典的DBAに見られた遺伝子変異を有する(表1-付)。
B. 診断を支持する基準
大支持基準
- 家族歴を有する。
小支持基準
- 赤血球アデノシンデアミナーゼ活性(eADA)と還元型グルタチオン(eGSH)の髙値 (注1)
- 古典的DBAにみられる先天奇形を有する(表2-付)。
- HbFの上昇。
- 他の先天性骨髄不全症候群の証拠がない。
Definite
Aの5項目のうち4項目を満たす。Probable
下記のいずれかを満たす。- 3つの診断基準と1つの大あるいは2つ小支持基準
- 2つの診断基準と3つの小支持基準
表1-付 古典的DBAにみられた遺伝子異常
RPL5, RPL9, RPL11, RPL15, RPL18, RPL26, RPL27, RPL29, RPL31, RPL35, RPL35A, RPS7, RPS10, RPS15, RPS15A, RPS17, RPS19, RPS24, RPS26, RPS27, RPS27A, RPS28, RPS29, TSR2, GATA1, EPO表2-付 DBAにみられる合併奇形
頭部・顔面・口蓋 両眼隔離症、口蓋裂、高口蓋、小頭症、小顎症、小耳症、耳低位、内眼角贅皮、眼瞼下垂など上肢 拇指骨数過多症、重複拇指、拇指低形成、平坦拇指球、合指症、橈骨動脈欠損
腎・泌尿器 腎臓欠損、馬蹄腎、腎低形成
心・肺 心室中隔欠損、心房中隔欠損、大動脈狭窄、複雑心奇形
その他
頸部 短脛、翼状頚
眼 先天性緑内障、斜視、先天性白内障
神経系 学習障害
低身長
診断の手順
DBAには、診断のために有用なスクリーニング法がない。Transient erythroblastopenia of childhood(TEC)との鑑別診断には、eADAの高値(mean±3SD以上)を確認することが有用である。しかし、DBA症例の約20%はeADAが有意の上昇を示さない。eADAとeGSHの同時測定により、遺伝子検査で確定診断し得たDBA症例は全例が家族内非罹患者と判別が可能である。確定診断に遺伝子診断は有用であるが、本邦では原因遺伝子が同定されるのは全体の約60%にすぎない。通常のシークエンス法で遺伝子変異を同定できない場合は、片アレルの大欠損を解析する必要がある。鑑別診断
赤芽球癆を呈する疾患の鑑別診断としては、TECが最も重要である。TECは1歳以上の幼児に好発し、先行するウイルス感染に続発することが多い疾患とされる。ほとんどの症例は無治療で1~2ヶ月以内に自然治癒する。正球性貧血を呈し、DBAと異なりHbFおよび赤血球アデノシンデアミナーゼ活性(eADA)は正常である。また、骨髄不全や外表奇形を特徴とする先天性造血不全症候群には、1)Dyskeratosis congenita、
2)Schwachman-Diamond症候群、
3)Congenital amegakaryocytic thrombocytopenia、
4) Pearson症候群などが知られている。
いずれも、稀少疾患ではあるが、それぞれの臨床像が特徴的で鑑別可能である。最近、上記にあげた疾患については、多くの原因遺伝子が同定されたことから、分子病態の解明が進むとともに、遺伝子診断も可能となっている。
参考文献
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班 Diamond-Blackfan貧血 診療の参照ガイド令和元年度改訂版
当該事業における対象基準
治療で補充療法、G-CSF療法、除鉄剤の投与、抗凝固療法、ステロイド薬の投与、免疫抑制薬の投与、抗腫瘍薬の投与、再発予防法、造血幹細胞移植、腹膜透析又は血液透析のうち、一つ以上を継続的に実施する(断続的な場合も含めておおむね6か月以上)場合。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会