1. 血液疾患
  2. 大分類: 赤芽球癆
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先天性赤芽球癆(ダイアモンド・ブラックファン(Diamond-Blackfan)貧血)

せんてんせいせきがきゅうろう (だいあもんど・ぶらっくふぁんひんけつ)

congenital red cell aplasia; Diamond-Blackfan anaemia

告示

番号:27

疾病名:先天性赤芽球癆(ダイアモンド・ブラックファン貧血)

疾患概念

ダイアモンド・ブラックファン貧血(Diamond-Blackfan anemia ; DBA)は、赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症である。骨髄は正形成であるが赤血球系細胞のみが著減し、末梢血では網赤血球が減少し、大球性正色素性貧血を呈する。新生児期から顔色不良で発見されることが多く、1歳までに90%が発症する。約50%の例は種々の奇形や発育障害を合併する。ほとんどが散発例であるが、約10~20%の症例では家族歴があり、常染色体優性遺伝の遺伝形式をとる。

疫学

発症頻度は、出生人口100万人あたり約5~7名と推定されている。

病因

近年、病因遺伝子の遺伝子座が第19番染色体長腕に同定され、そこに存在する原因遺伝子がリボソームタンパクの一つであるRPS19をコードする遺伝子であることが明らかにされた。RPS19遺伝子は約25%のDBAに認められる。最近、別のリボソームタンパク(RPL5, RPL9, RPL11, RPL15, RPL18, RPL26, RPL27, RPL31, RPL35, RPL35A, RPS7, RPS10, RPS15A, RPS17, RPS19, RPS24, RPS26, RPS27, RPS28, RPS29)の遺伝子変異が発見され、欧米では約50%のDBAにおいて遺伝子異常が明らかにされている。リボソームの機能障害のために生じる翻訳の異常が、貧血を引き起こす中心的なメカニズムであることが明らかになりつつある。最近、リボソームタンパク遺伝子以外の原因として、X染色体連鎖DBAの2家系でGATA1転写因子の遺伝子変異が同定された。なお、我が国では約60%のDBAに遺伝子異常が認められる。

臨床症状

  1. 貧血症状 顔色不良、息切れ、動悸、めまい、易疲労感、頭痛。
  2. 合併奇形 頭部・顔部の異常が最も多く、大頭、小頭、大泉門開大、顔貌異常、小顎、口蓋裂、巨舌、兎唇などが約20~30%に認められる。上肢の異常としては母指球の平坦化、母指骨異常などが10~20%に認められる。腎泌尿器系の奇形や先天性心疾患を7~20%に認める。また、知能障害や低身長なども認められることがある。

診断

診断の手引き参照。

診断の際の留意点/鑑別診断

診断の手引き参照。

治療

  1. 薬物療法 副腎皮質ステロイド療法は約80%の症例で反応が認められる。約20%の症例はステロイドから離脱可能となる。副作用として成長障害などに注意が必要で、6か月未満の症例において推奨されない。他の治療薬については一定の評価はまだ得られていない。
  2. 輸血 副腎皮質ステロイド抵抗性である場合には、輸血が必要となる。ヘモグロビン値は8 g/dlを維持することが基本であるが、長期間の輸血は鉄過剰症をきたす。Deferasiroxなどによる除鉄療法の併用が望ましい。
  3. 造血幹細胞移植 ステロイド不応性の輸血依存例は、造血幹細胞移植の適応となる。現時点では、移植ソースとしてはできるだけ骨髄を選択すべきである。骨髄非破壊的前処置を支持するデータは不十分である。

予後

生命予後は一般的に良好であるが、ステロイド療法および輸血依存症例が約40%ずつ存在しており、副作用および合併症に長期にわたり悩まされ、生活の質としては高いといえない。また、DBAはFanconi貧血より頻度は低いが、骨髄異形成症候群(MDS)、白血病、大腸癌、骨肉腫などの悪性疾患を合併しやすい。

研究班

厚労省科学研究費難治性疾患政策研究事業「先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究班」(研究代表者伊藤悦朗)

成人期以降の注意点

合併する形態異常や臓器異常・低身長などに対して長期的な健康管理支援が必要。長期にわたる輸血やステロイド、造血幹細胞移植などの治療施行例においては、治療による合併症を意識した長期的な経過観察を要する。本症は白血病や骨肉腫などの悪性疾患を来しやすいので、経過観察に際して留意すべきである。

参考文献

  1. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班 Diamond-Blackfan貧血 診療の参照ガイド令和元年度改訂版.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会