診断方法
(1) 以下に示す各臨床型の診断ポイントをもとに、ALDを疑い、血中極長鎖脂肪酸を測定する。
1) 小児および思春期大脳型:途中から気づく斜視や、「見えにくそう」、「聞こえにくそう」な様子から眼科や耳鼻科を受診後に経過観察されている症例、学校等にて落ち着きのなさや行動異常、成績低下、書字やしゃべり方の異常からADHDや学習困難児として対応されている症例もみられる。いずれもけいれんの発症や症状の進行や広がりにより専門医等を受診して、脳MRI検査にてALDが疑われることが多い。それ以外にも年少児も含めた歩行障害やけいれんを初発症状として認める症例も散見される。好発年齢としては7歳を頂点に、多くは3歳から15歳くらいまでに発症する。
2) AMN:つっぱったような歩行障害(痙性対麻痺)がゆっくりと現れ、排尿障害(尿が漏れる)、陰萎(インポテンツ)などの自律神経障害も加わる。腫瘍や損傷とともに脊髄小脳変性症の鑑別としても重要である。
3) 成人大脳型:成人期以降に性格の変化、知能低下、精神病様症状などで発病するため、認知症や精神疾患の鑑別として重要である。
4) アジソン型:2歳以降から成人期にかけて非特異的な症状である易疲労感、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、体重減少、低血圧などで発症する。また食欲不振や悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状、精神症状(無気力、不安、うつ)など様々な症状も訴える。鑑別として重要な症状である色素沈着は皮膚、肘や膝などの関節部、爪床、口腔内にみられる。
5) 女性保因者:一部の女性保因者では加齢に伴い、AMN類似の症状を来すことがある。
(2) 男性 ALD患者では上記の臨床所見、大脳型では脳MRIに、血中極長鎖脂肪酸の増加を認めれば診断は確定的である。一方、女性保因者では極長鎖脂肪酸は増加する傾向にあるものの、その値にはかなりの幅があり、確定診断にはABCD1遺伝子変異の確認が必要である。
当該事業における対象基準
疾患名に該当する場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会