診断方法
臨床病型:
IXa型 αサブユニット異常症 (肝型、X連鎖性遺伝)
IXb型 βサブユニット異常症 (肝筋型、常染色体劣性遺伝)
IXc型 γサブユニット異常症 (肝型、常染色体劣性遺伝)
IXd型 αサブユニット異常症 (筋型、X連鎖性遺伝)
IXa, IXb, IXc型糖原病の診断の手引き
(1) 下記の症状・臨床検査から糖原病IX型(IXa, IXb, IXc)を疑う。
症状:空腹時の低血糖症状、肝腫大注1)、腹部膨満、人形様顔貌、低身長、成長障害
(I型に比し症状が軽度であり、IX型糖原病の中には無症状の症例もある。)
軽度のミオパチー症状(IXb型)
臨床検査:
① 空腹時低血糖
② 食後血中乳酸の上昇
③ 肝機能障害
④ 高尿酸血症
⑤ 血清CK値:IXb型では高値の場合がある。
⑥ 画像検査
超音波検査、CT, MRIで肝腫大を認める。グリコーゲン蓄積のため、肝超音波検査のエコー輝度、肝臓CTの信号強度ともに上昇する。高脂血症の程度により脂肪沈着のためCT値が低下する場合もある。
⑦ 肝生検: 肝組織にグリコーゲンの著明な蓄積と脂肪肝を認める。(診断のために必須ではない)
(2)診断の根拠となる特殊検査:
① 食後の乳酸値の変化あるいはグルコース負荷試験
食後もしくはグルコース負荷で乳酸値が上昇する。
(参考:糖原病III型, VI型, IX型で共通の結果となる。)
② グルカゴン負荷試験注2), 3)
空腹時および食後2時間の血糖が上昇する。
(参考:糖原病III型では空腹時の試験では血糖が上昇せず、食後2時間の試験で血糖が上昇する。糖原病VI型では空腹時および食後2時間のグルカゴン負荷試験で血糖が上昇しない。)
③ 酵素診断
赤血球または肝組織、筋組織(IXb型)を用いホスホリラーゼキナーゼの酵素欠損または低下を証明する注4)。
④ 遺伝子解析
PHKA2(IXa)、PHKB(IXb)、PHKG2 (IXc)の遺伝子解析にて病因となる遺伝子変異を同定する。それぞれの遺伝子における好発変異の報告はない。
診断基準:
①主要症状または参考となる検査所見のうち、肝腫大を認め、肝機能障害、もしくは低血糖のいずれか一つが存在し、グルコース負荷試験で乳酸値が上昇した症例は、III型, VI型, IX型の肝型糖原病の疑診例とする。
②酵素診断でホスホリラーゼキナーゼの酵素の欠損または低下を証明、または遺伝子解析で病因となる遺伝子変異が同定された症例を確定診断例とする。
注1:肝腫大は乳児期には発現するが、発現時期は様々であることを考慮して診断を進める必要がある。
注2:上記検査②による糖原病の病型診断は必ずしも真の診断に合致しない。そのためグルコース負荷試験(①)の結果により糖原病が疑われる症例では、糖原病III型, VI型, IX型の可能性を考慮し、確定診断を進めるべきである。
注3食後もしくはグルコース負荷で乳酸値が低下し、糖原病I型が疑われる症例ではグルカゴン負荷試験は推奨しない)
注4:X連鎖性肝型(XLG)の一部では赤血球のホスホリラーゼキナーゼ活性低下を認めず、これらをXLG2型に分類される。肝組織でも酵素活性低下がなくてもXLG2型は否定できない。IXb型(肝筋型)の一部では赤血球のホスホリラーゼキナーゼ活性低下を認めない症例があるが、肝組織と筋組織の酵素活性が低下する。
IXd型糖原病の診断の手引き
(1) 下記の症状・臨床検査から糖原病IX型(IXd型、筋型)を疑う。
症状:運動不耐、労作時筋痛、運動時有痛性筋けいれん、ミオグロビン尿症、横紋筋融解症。
一部の症例では緩徐進行性の筋力低下。
臨床検査:
① 血清CK高値:運動誘発性筋症状出現時には著明に上昇する。
② 尿中・血中ミオグロビン、血清尿酸値の上昇
③ 血清BUN, クレアチニンの上昇。
(2)①により筋型糖原病が疑われ、②または③によりIXd型糖原病の確定診断をする。
診断の根拠となる特殊検査:
① 生検筋組織化学検査
筋漿膜下にグリコーゲンの蓄積を認める。
② 酵素活性測定
生検筋におけるホスホリラーゼキナーゼ活性欠損または低下を証明する。
③ 遺伝子解析
病因となるPHKA1遺伝子変異を同定する。
診断基準
酵素活性測定によりホスホリラーゼキナーゼ活性欠損または低下を証明または、病因となるPHKA1遺伝子変異を同定した症例を確定診断例とする。
当該事業における対象基準
疾患名に該当する場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本先天代謝異常学会