診断の手引き

  1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: 脂肪酸代謝異常症
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中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症

ちゅうさあしるこえーだっすいそこうそけっそんしょう

Medium-chain acyl-CoA dehydrogenase (MCAD) deficiency

告示

番号:48

疾病名:中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症

診断方法

主要症状および臨床所見、診断の根拠となる特殊検査に基づいて行う。

1.主要症状および臨床所見

各病型で高頻度に認められる急性期の所見は以下の症状があげられる。

①意識障害、けいれん
新生児期発症型、乳幼児期発症型でみられる。急激な発症形態から急性脳症、ライ様症候群と診断される場合も多い。

②骨格筋症状
主に遅発型でみられる。横紋筋融解症やミオパチー、筋痛、易疲労性を呈する。感染や饑餓、運動、飲酒などを契機に発症することが多く、症状が反復することも特徴である。また一部には妊娠中に易疲労性などがみられる症例もある。

③心筋症状
主に遅発型にみられる。新生児期発症型で稀に、心不全、致死的な不整脈などがみられることがある。

④呼吸器症状
新生児期発症型を中心として多呼吸、無呼吸、努力呼吸などの多彩な表現型を呈する。

⑤消化器症状
特に乳幼児期発症型において、嘔吐を主訴に発症することがある。

⑥肝腫大
新生児期発症型、乳幼児期発症型で多くみられる。病勢の増悪時には著しい腫大を認めることもあるが、間欠期には明らかでないことも多い。


2.診断の根拠となる特殊検査

①血中アシルカルニチン分析
濾紙血を用いた新生児マススクリーニングにて、C8(参考値;>0.3)かつC8/C10(参考値;>1.0)という陽性所見を示す※。十分な哺乳の後は、濾紙血タンデムマスではアシルカルニチンが正常化し、疾患がマスクされることがあり、血清を用いたアシルカルニチン分析が有用である。
※ 但し、タンデムマス法によるスクリーニングの基準値には、施設・機器等の調整に伴い、若干の変動が生じる。

②尿中有機酸分析
ジカルボン酸類および、ヘキサノイルグリシン(C6)、スベリルグリシン(C8)の増加がみられる。ジカルボン酸尿は他の脂肪酸代謝異常症やその他の病態でも認められ、特異的ではない。
③末梢血リンパ球や培養皮膚線維芽細胞などを用いた酵素活性測定
④ in vitro probe assay(β酸化能評価)
⑤イムノブロッティング
⑥遺伝子解析
責任遺伝子は、ACADM遺伝子(OMIM #607008)である。


3. 診断基準

疑診:
発症前型を除き、1. 主要症状及び臨床所見のうち少なくとも一つを認め、2. 診断の根拠となる検査のうち①アシルカルニチン分析と②尿中有機酸分析で疾患特異的なプロファイルを認めるとき、疑診とする。新生児マススクリーニングなどによる発症前型に関しては、タンデムマス・スクリーニングのアシルカルニチン分析で疾患特異的なプロファイルを認めるとき、疑診とする。

確定診断:
上記に加え、2. 診断の根拠となる検査のうち③〜⑥の少なくとも一つで疾患特異的所見を認めるとき、確定診断とする。

当該事業における対象基準

疾患名に該当する場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本先天代謝異常学会