診断の手引き

  1. 先天性代謝異常
  2. 大分類: 脂肪酸代謝異常症
44

極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症

ごくちょうさあしるこえーだっすいそこうそけっそんしょう

Very-long-chain acyl-CoA dehydrogenase (VLCAD) deficiency

告示

番号:43

疾病名:極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症

診断方法

主要症状および臨床所見、診断の根拠となる特殊検査に基づいて行う。

1.主要症状および臨床所見

各病型で高頻度に認められる急性期の所見は以下の症状があげられる。
①意識障害、けいれん
低血糖によって起こる。急激な発症形態から急性脳症、肝機能障害を伴う場合はライ様症候群と臨床診断される場合も多い。
②心筋症状
心筋症は新生児期発症例で見られることがあり、治療に難渋する。
③不整脈
心筋症に伴うことが多い。
④肝腫大
病勢の増悪時には著しい腫大を認めることもあるが、間欠期には明らかでないことも多い。
⑤骨格筋症状
ミオパチー、筋痛、易疲労性を呈する事が多い。本疾患ではしばしば横紋筋融解症を来す。幼少時には肝型の臨床像であっても、年長になるに従い、骨格筋症状が中心となる症例がある。
⑥消化器症状
乳幼児期発症型において、低血糖時に嘔吐が主訴になることがある。
⑦発達遅滞
診断に至らなかった急性発作からの回復後や繰り返す低血糖発作によると考えられる。


2.診断の根拠となる特殊検査

①血中アシルカルニチン分析
C14:1(cut off < 0.4 nmol/ml)の上昇、C14:1/C2比(cut off < 0.013)の上昇が最も重要な所見である※。本症では、C12〜C16 鎖長の長鎖アシルカルニチンの上昇もみられる事があるが、その中でもC14:1が最も目立って上昇する。ごく軽症例を除いて急性期の検体であればC14:1は上昇が確認できる。但し、急性期を過ぎると血液ろ紙のアシルカルニチン分析では生化学的な異常が同定出来ないこともある。この場合、血清のアシルカルニチン分析が生化学診断に有用な場合が多い。また、時に遊離カルニチンが低下する症例がみられる。二次性カルニチン欠乏症時においてはC14:1を含むアシルカルニチンも全般に低値になるのでC14:1/C2やC14:1/C16などの指標で評価することも有用である。

※ 但し、タンデムマス法によるスクリーニングの基準値には、施設・機器等の調整に伴い、若干の変動が生じる。

②尿中有機酸分析
非ケトン性ジカルボン酸尿を呈し、脂肪酸代謝異常症を示唆する所見が得られることが多い。本症を特異的に示唆する所見はみられない。
③末梢血リンパ球や培養皮膚線維芽細胞などを用いた酵素活性測定
④ in vitro probe assay(β酸化能評価)
⑤イムノブロッティング
⑥遺伝子解析
責任遺伝子は、ADADVL遺伝子(OMIM # 201475)である。


3.診断基準

疑診;
発症前型を除き、1. 主要症状及び臨床所見のうち少なくとも一つを認め、2. 診断の根拠となる検査のうち①アシルカルニチン分析と②尿中有機酸分析で疾患特異的なプロファイルを認めるとき、疑診とする。新生児マススクリーニングなどによる発症前型に関しては、タンデムマス・スクリーニングのアシルカルニチン分析で疾患特異的なプロファイルを認めるとき、疑診とする。

確定診断;
上記に加え、2. 診断の根拠となる検査のうち③〜⑥の少なくとも一つで疾患特異的所見を認めるとき、確定診断とする。

当該事業における対象基準

疾患名に該当する場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本先天代謝異常学会