診断方法
大分類1.「糖尿病」の『診断の手引き』はこちら。
糖尿病と診断されたもののうち、下記に示すインスリン受容体異常症の基準を満たすもの。
インスリン受容体異常症の種類
- ①
- Donohue症候群(妖精症、leprechaunism)
- ②
- Rabson-Mendenhall症候群
- ③
- A型インスリン抵抗症
- ④
- B型インスリン抵抗症
Donohue症候群(妖精症、leprechaunism)の診断
特徴的臨床症状を伴い、高度のインスリン抵抗性を伴う高血糖、ときに低血糖をきたす。インスリン受容体遺伝子の両アリル異常の証明により確定される。
Rabson-Mendenhall症候群の診断
特徴的臨床症状を伴い、高度のインスリン抵抗性を伴う高血糖、ときに低血糖をきたす。インスリン受容体遺伝子の両アリル異常の証明により確定される。
A型インスリン抵抗症
- (ア)
- 自覚症状
高血糖に伴う口渇、多飲、多尿、易疲労感を自覚することもある。
- (イ)
- 理学所見
- 黒色表皮腫
- 多毛症
- 多のう胞性卵巣
- (ウ)
- 血液、生化学検査所見
高インスリン血症を呈するがインスリン抗体ならびにインスリン受容体抗体は存在しない。
- (エ)
- その他の検査
- インスリンに対する血糖低下の反応が悪い(インスリン抵抗性の存在)
- 患者から得られた培養リンパ球や皮膚線維芽細胞において、インスリン受容体の数あるいは親和性の低下、あるいは機能(チロシンキナーゼ活性など)の異常が存在する。
- インスリン受容体遺伝子の異常が存在する。
- (オ)
- その他の検査
- 高インスリン血症を呈する異常インスリン血症ならびに家族性高プロインスリン血症はインスリンに対する血糖低下の反応が良い点で鑑別できる。
- 高インスリン血症とインスリン抵抗性を呈するインスリン受容体異常症B型はインスリン受容体自己抗体が存在する点で鑑別できる。
- 高インスリン血症とインスリン抵抗性を呈する脂肪萎縮性糖尿病は臨床症状により鑑別できる。
- 高インスリン血症とインスリン抵抗性を呈するRabson-Mendenhall症候群ならびに妖精症(leprechaunism)はインスリン受容体遺伝子の異常を認めることが多く、これらの病態に特有の臨床症状を呈するときは除外しなければならない。
- (カ)
- 診断の判定
前項(エ)その他の検査 の 1. ならびに 2. の存在、さらに脂肪萎縮性糖尿病、Rabson-Mendenhall症候群、妖精症を除外して診断する。3. があれば確定診断できる。
B型インスリン抵抗症
- (ア)
- 自覚症状
- 高血糖に伴う口渇、多飲、多尿、易疲労感を自覚することもある。
- 低血糖を呈し、それに伴う空腹感、冷汗、手足のふるえ、頭痛などを自覚することもある。
- 他の自己免疫疾患を合併していることが多く、皮疹、関節痛、口腔内乾燥感などを自覚することもある。
- (イ)
- 理学所見
- 黒色表皮腫
- 皮膚の変化、レイノー現象、関節痛など膠原病に伴う各種の所見を認める。
- (ウ)
- 血液・生化学検査所見
- 血糖値の異常(多くは高血糖を呈するが低血糖を呈する場合もある)
- 血沈亢進、γ―グロブリンの増加、各種自己抗体陽性など膠原病に伴う異常検査所見を認める。
- (エ)
- その他の検査
- 患者血中にインスリン受容体に対する自己抗体が存在すること。
- インスリンに対する血糖低下の反応が悪い(インスリン抵抗性の存在)。
- (オ)
- その他の検査
- 高インスリン血症を呈する異常インスリン血症ならびに家族性高プロインスリン血症はインスリンに対する血糖低下の反応が良い点で鑑別できる。
- 他の高インスリン血症ならびにインスリン抵抗性を示す疾患(インスリン受容体異常症A型、Rabson-Mendenhall症候群、妖精症など)とは、インスリン受容体に対する自己抗体が血中に存在することで鑑別できる。
- インスリノーマやインスリン自己免疫症候群などの空腹時低血糖を示す疾患とは、インスリン受容体に対する自己抗体が血中に存在することで鑑別できる。
- (カ)
- 診断の判定
前項(エ)その他の検査 の 1. により診断確定する。
当該事業における基準
治療でインスリンその他の糖尿病治療薬又はIGF-1のうち一つ以上を用いている場合。食事療法、生活指導のみの症例は対象外である。
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年6月1日
- 文責
- :日本小児内分泌学会