診断方法
原発性の慢性副腎不全は1855年英国の内科医であるThomas Addisonにより初めて報告された疾患であることから、Addison病とも呼ばれている。
その後原発性慢性副腎皮質機能低下症の病因として、副腎皮質ステロイド合成酵素欠損症による先天性副腎皮質過形成症、先天性副腎低形成(X連鎖性、常染色体性)、ACTH不応症などが同定され責任遺伝子も明らかなり、現在は先天性のものはアジソン病とは独立した疾患単位として扱われるようになった。
このためアジソン病は後天性の成因による病態を総称する用語として用いられている。
原発性を呈するものとして副腎の発生・分化に関わる転写因子の異常により副腎欠損を呈するDAX-1や、DAX-1遺伝子を含む大きな遺伝子欠失のために近傍のデユシャンヌ型筋ジストロフィー遺伝子やグリセロールキナーゼの欠損を伴う隣接遺伝子症候群によるものなどがある。
臨床症状
- 副腎不全症状:発症時期は新生児期から成人期までさまざまである。 哺乳力低下、体重増加不良、嘔吐、脱水、意識障害、ショックなど。
- 皮膚色素沈着 全身のび慢性の色素沈着。
- 低ゴナドトロピン性性腺機能不全 停留精巣、ミクロペニス、二次性徴発達不全(年長児)(註1)
- 精子形成障害
検査所見
- 全ての副腎皮質ホルモンの低下
- 血中コルチゾールの低値
- 血中アルドステロンの低値;
- 血中副腎性アンドロゲンの低値
- 尿中17-OHCS/コルチゾール, 17-KSの低値
- ACTH負荷試験で全ての副腎皮質ホルモンの分泌低下
- 尿中ステロイドプロフィルにおいて、ステロイド代謝物の全般的低下、特に新生児期の胎生皮質ステロイド異常低値(註2)
- 血中ACTH、PRAの高値
- 血中ゴナドトロピン低値
- 画像診断による副腎低形成の証明
遺伝子診断
DAX-1(NR0B1)遺伝子の異常
除外項目
- SF-1異常症
- ACTH不応症(コルチゾール低値、アルドステロン正常)
- 先天性リポイド過形成症
副腎病理所見
永久副腎皮質の形成障害と、空胞形成を伴う巨大細胞で形成された胎児副腎皮質の残存とを特徴とするcytomegalic formを示す。
参考所見
Duchene型筋ジストロフィ症に先天性副腎低形成症を合併することがある。 精神発達遅滞、成長障害、glycerol kinase欠損症を伴うDAX-1遺伝子欠失による。
- 註1.
- 例外的にゴナドトロピン非依存性の思春期早発症を来した症例の報告がある。
- 註2.
- 国内ではガスクロマトグラフ質量分析ー選択的イオンモニタリング法による尿ステロイドプロフィル(保険未収載)が可能であり、診断に有用である。(ただし本検査のみで先天性副腎低形成症と先天性リポイド過形成との鑑別は不可)
診断基準
- 確実例:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲおよび、IV を満たすもの
- ほぼ確実例:Ⅰ、Ⅱ および、IV を満たすもの
- 疑い例:Ⅰ、IV および、Ⅱの一部を満たすもの
当該事業における対象基準
治療で補充療法、機能抑制療法その他薬物療法のいずれか1つ以上を行っている場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児内分泌学会