診断の手引き

  1. 慢性心疾患
  2. 大分類: 肺静脈還流異常症
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部分肺静脈還流異常症

ぶぶんはいじょうみゃくかんりゅういじょうしょう

Partial anomalous pulmonary venous connection

告示

番号:78

疾病名:部分肺静脈還流異常症

診断方法

【症状・臨床所見】
異常還流する肺静脈の本数、心房中隔欠損の有無により症状は様々で、無症状のものから総肺静脈還流異常と同様に肺うっ血に伴う症状を呈するものまで様々である。scimitar症候群では一般に短絡量は少ないが、心房中隔欠損の大きな例、肺分画症の流量が多い例、右肺低形成の著しい例では乳児期より肺高血圧を生じ心不全症状や呼吸困姪をきたす。聴診上、心房中隔欠損を伴う例ではⅡ音の固定性分裂と肺動脈弁での相対的駆出性雑音および三尖弁口での拡張期ランブル音を認める。心房中隔欠損がなく異常還流する肺静脈が少ない場合は無症状のことも多く、成人で発見されることもある。

【胸部X線】
 肺静脈が上大静脈に還流する例では、その部分の拡大を認める。scimitar症候群では右肺静脈の下大静脈への還流が三日月刀状の陰影として認められる。肺血流の増加に伴い、第二弓の突出を認める。短絡量が少ない例では正常範囲である。

【心電図】
右心系の容量負荷に伴いP波の増高や不完全右脚ブロックを認める。静脈洞型心房中隔欠損を伴う場合、Ⅱ、Ⅲ、aVFで陰性P波を認めることがある。短絡量が少ない例では正常範囲である。

【心エコー図】
異常肺静脈の体静脈または直接右房への流入を認める。右心系への容量負荷に応じて、右房・右室の拡大を認める。心内奇形を有さないにもかかわらず、右心系の拡大を認める例や、静脈洞型心房中隔欠損の例、冠状静脈洞の拡大を認める例では、本症の合併を考慮する。

【心臓カテーテル・造影所見】
肺静脈が異常還流した部位では酸素飽和度の上昇を認める。肺動脈の選択造影の静脈相で異常還流した肺静脈が造影される。カテーテルを異常肺静脈に挿入できれば選択的造影により異常還流する肺静脈が確認できる。

【MRI】
縦隔や肺内の肺静脈の構造を描出しやすく、異常還流する肺静脈および心血管構造との位置関係も 評価できる。

【鑑別】
心房中隔欠損や総肺静脈還流異常などの右心系の容量負荷を有する疾患が鑑別となる。

【診断】
心エコーあるいはCT、MRI、心臓カテーテル検査により上大静脈や右房に異常還流する肺静脈を確認することにより診断する。

当該事業における対象基準

治療中又は次の①から⑨のいずれかが認められる場合

①肺高血圧症(収縮期血圧40mmHg以上)
②肺動脈狭窄症(右室-肺動脈圧較差20mmHg以上)
③2度以上の房室弁逆流
④2度以上の半月弁逆流
⑤圧較差20mmHg以上の大動脈狭窄
⑥心室性期外収縮、上室性頻拍、心室性頻拍、心房粗細動又は高度房室ブロック
⑦左室駆出率あるいは体心室駆出率0.6以下
⑧心胸郭比 60%以上
⑨圧較差20mmHg以上の大動脈再狭窄

最終手術不能のためチアノーゼがあり、死に至る可能性を減らすための濃厚なケア、治療及び経過観察が必要な場合

以上の何れかを満たす場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児循環器学会