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部分肺静脈還流異常症

ぶぶんはいじょうみゃくかんりゅういじょうしょう

Partial anomalous pulmonary venous connection

告示

番号:78

疾病名:部分肺静脈還流異常症

概念・定義

部分肺静脈還流異常は,4本の肺静脈のうち1〜3本が体静脈系に異常還流する疾患である。 心房中隔欠損に合併することが多い。胎生早期に共通肺静脈の一部が閉鎖し、体静脈系と交通を残すことにより生じる。心房中隔欠損の心内修復手術時に、一緒に治療する。

病因

内臓心房錯位症候群に合併することが多いが、病因は不明である。Turner症候群やNoonan症候群に合併しやすいとの報告もある

疫学

無症状で剖検ではじめて発見される例もあり、一般剖検例の0.6%に認められる。心房中隔欠損では9%に本症の合併を認める。逆に部分肺静脈還流異常の85~90%は心房中隔欠損を合併する

臨床症状

異常還流する肺静脈の本数、心房中隔欠損の有無により症状は様々で、無症状のものから総肺静脈還流異常と同様に肺うっ血に伴う症状を呈するものまである。scimitar症候群では一般に短絡量は少ないが、心房中隔欠損の大きな例、肺分画症の流量が多い例、右肺低形成の著しい例では乳児期より肺高血圧を生じ心不全症状や呼吸困難をきたす。聴診上、心房中隔欠損を伴う例ではⅡ音の固定性分裂と肺動脈弁での相対的駆出性雑音および三尖弁口での拡張期ランブル音を認める。心房中隔欠損がなく異常還流する肺静脈が少ない場合は無症状のことも多く、成人で発見されることもある

診断

心エコーあるいはCT、MRI、心臓カテーテル検査で上大静脈や右房に異常還流する肺静脈を確認することにより診断する。 【胸部エックス線】 肺静脈が上大静脈に還流する例では、その部分の拡大を認める。scimitar症候群では右肺静脈の下大静脈への還流が三日月刀状の陰影として認められる。肺血流の増加に伴い第二弓の突出を認めるが、短絡量が少ない例では正常範囲である。 【心電図】 右心系の容量負荷に伴いP波の増高や不完全右脚ブロックを認める。静脈洞型心房中隔欠損を伴う場合、Ⅱ、Ⅲ、aVFで陰性P波を認めることがある。短絡量が少ない例では正常範囲である。 【心エコー図】 異常肺静脈の体静脈または直接右房への流入を認める。右心系への容量負荷に応じて、右房・右室の拡大を認める。心内奇形を有さないにもかかわらず、右心系の拡大を認める例や、静脈洞型心房中隔欠損の例、冠状静脈洞の拡大を認める例では、本症の合併を疑う。 【心臓カテーテル・造影所見】 肺静脈が異常還流した部位で酸素飽和度の上昇を認める。肺動脈造影では、静脈相で異常還流した肺静脈が造影される。カテーテルを異常肺静脈に挿入できれば選択的造影により異常還流する肺静脈が確認できる。 【MRI】 縦隔や肺内の肺静脈の構造を描出しやすく、異常還流する肺静脈および心血管構造との位置関係も評価できる

治療

肺体血流比1.3~1.8以上で手術が施行される場合が多い。異常還流の肺静脈は直接またはパッチを用いて左房に還流するよう修復する

予後

本症の予後は心房中隔欠損単独の場合に類似する。術後遠隔成績は良好であり、肺血管閉塞病変はまれである

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会